戦後日本のメディアと市民意識 「大きな物語」の変容
戦後の日本において、マス・メディアは大きな影響力を持ち続けてきたが、市民に満足・安心をもたらしたのか、もしくは不安を喚起したのだろうか。本書は、戦後、日本のメディアが発信してきたメッセージと、受け手の市民がそれをどのように受容し、解釈し、行動してきたかを検討する。文化共同体としての国民国家を再生産し、「大きな物語」を紡いできたメディア言説はどこへ向かうのか。本書は、その問いの第一歩である。
第1章 メディアと市民意識
――戦後日本社会を中心に
1 戦後日本社会とメディア
2 「市民」と「市民」意識のとらえ方
3 国民国家・民主主義・メディア
4 経済大国志向の定着―戦後日本のメディアと市民意識⑴
5 「大きな物語」の変容、あるいは終焉―戦後日本のメディアと市民意識⑵
6 メディア政治とメディア・ナショナリズム―戦後日本のメディアと市民意識⑶
7 戦後日本社会のゆくえ
第2章 戦後日本の社会理論における権力主体とメディア
――自由と能動性の背反
1 現代における「画一性」の出現
2 大衆社会における「自由の重荷」
3 管理社会における「偽りの自由」
4 消費社会論と「諦観としての自由」
5 自由と能動性の背反
第3章 ウェブに見られるテレビ・オーディエンスの活動と公共性
――市民による公共性を越えて
1 市民とテレビ・オーディエンスの乖離
2 市民参加とメディア
3 私的領域のテレビ・オーディエンス
4 ウェブを通じたテレビ・オーディエンスの活動
5 ウェブにおけるテレビ・オーディエンスの活動と公共性
6 メディアと公共性の新たな道筋
第4章 沖縄問題と市民意識
――「我々」意識の構築をめぐる「境界線の政治」とメディア言説
1 戦後日本の「平和」と「沖縄」
2 「沖縄問題」の展開と境界線の政治
3 沖縄の反基地感情と地方紙
4 1995年以降の沖縄問題をめぐるメディアと世論
5 沖縄問題と「我々」
第5章 戦後日本のマス・メディア報道と公害・環境問題
――市民意識、マス・メディア報道、報道規範の相互関係
1 近代化の「負の側面」としての公害・環境問題
2 戦前の「公害」前史
3 戦後における公害・環境問題の社会問題化
4 公害・環境問題の社会問題化とマス・メディア報道規範の再構築
5 社会問題をとらえる視角の拡大
第6章 戦後日本の原子力に関する社会的認識
――ジャーナリズム研究の視点から
1 フクシマへと至る道筋を問う
2 原子力平和利用の啓蒙
3 核アレルギー
4 原発の社会問題化と新聞報道
5 原発論争の大衆化
6 原子力産業の斜陽化とルネッサンス
7 戦後日本社会を問うために
索 引