モダン東京の歴史社会学 「丸の内」をめぐる想像力と社会空間の変容
大都市東京の基本構造として、大正から昭和初期に近代都市としての原型が生み出され、現在にも引き継がれる「モダン東京」の現在とその歴史的意味とはいかなるものか。本書は、丸の内地区を中心とした数々の資料や調査をもとに、「東京都心」という場所をめぐる想像力と社会的意味の変容を考察する。
[ここがポイント]
○2012年秋に生まれ変わった「丸の内」がどのように誕生し,歩んできたのかがわかる一冊。
○「丸の内」の歴史的変遷や社会的意味を分析し,「都市再構築」のありかたを問い直す。
1 丸の内地区の都市形成プロセス上の転換点
2 本書の構成
第1章 歴史的存在としての「モダン東京」
1 日本都市社会学における「都心」という問題構制
––都市・空間・権力
2 都市社会学と歴史社会学のあいだ
3 「空間/場所の歴史」をめぐる諸論と方法論的検討
4 研究対象地域の概要と調査方法
第2章 丸の内の誕生前史
––江戸から東京へ
1 江戸時代から明治維新へ
2 場所から空間への解放
3 天皇の「可視化」と浮上する「東京」
4 江戸との連続性と非連続性
第3章 「新しい」都市空間の創出と「都市政治」の成立
––丸の内の誕生とその背景
1 「近代都市」東京を「都市計画」から考える
2 「社会的過程」としての都市計画とその都市認識
3 土地所有関係の流動化と社会−空間構造の再編
4 「近代都市」東京への道程と丸の内の誕生
5 「都市計画」を取り巻く夢と現実
第4章 「モダン東京」の誕生と丸の内の中心化
––「丸の内」という場所の構築
1 「移動」性と「都市的なもの」へのまなざし
2 東京駅の誕生と「天皇」をめぐる儀礼の場の構造転換
3 「丸の内」誕生の背景とその諸要件
4 移動する「身体」と「移動」性の構造転換
5 「都市的なもの」をめぐる想像力
第5章 「都市づくり」におけるポリティクスの審美化
––「景観」の複数性はいかに浮上するか
1 「景観」から「都市づくり」を読み解くために
2 丸の内の美観・景観論争の歴史的位置
3 丸の内の美観・景観論争の現在
4 「景観」という回路と「都市づくり」の深化
第6章 再開発下における場所の構築と新たな「丸の内らしさ」
1 「空間/場所」をめぐる「経済的」な力と「社会・文化的」な力
2 丸の内地区における産業構造の転換とその文化的帰結
3 「『丸の内らしさ』に関する調査」の位置と概要
4 事業所環境から見た丸の内の現在––経済的側面
5 丸の内をめぐる感情とシンボリズム––社会・文化的側面
6 「丸の内らしさ」の再審に向けて
終 章 近代都市空間の生産とその経験
1 東京・丸の内における「都市の意味」とその規定要因
2 丸の内という「場所」とその「現在」性
3 本書の意義
4 「東京都心」あるいは「モダン東京」の歴史社会学、第二ステージへ
あとがき
参考文献
人名・事項索引