ホーソーンと孤児の時代 アメリカン・ルネサンスの精神史をめぐって
父なし子の精神史という視点からホーソーン文学と19世紀アメリカ精神に迫り、「孤児の時代」としてのアメリカン・ルネサンスとその文学の実相を浮彫りにする。
1 父なし子の文学
2 アメリカン・ルネサンスと父性の問題
3 楽観的時代と精神の影
4 ホーソーン、メルヴィル、父性の探求
5 ホーソーン——新たなる父性の創造
第1章 孤児の風景
——三つの短編小説から
1 個人主義の影
2 孤児の時代——スケッチ
3 孤児の風景
第2章 アメリカン・ロマンスという「空間」
——「税関」と父親の影をめぐって
1 ロマンスとは何か
2 「税関」と『緋文字』
3 「税関」の「父親」たち
4 屋根裏の「父親」
5 リアリズムへの視線
第3章 『緋文字』と「父親」の誕生
1 解き放たれた情念
2 ディムズデイルと「父親」の社会
3 二人の「父親」
4 分裂を統合する父親
5 母(Mother)という「他者」(Other)
第4章 『七破風の屋敷』——モールの呪いと近代の神話
1 ピンチョンの死
2 モールという「他者」
3 モールとは誰か
4 モール、クリフォード、抑圧された精神の復権
5 アメリカにおける「大いなる監禁」
6 二人の孤児のゆくえ
第5章 詩的言語の理想郷
——『ブライズデイル・ロマンス』論Ⅰ
1 ロマンス作家の心理的自伝
2 詩人カヴァーデイルの目的
3 詩的言語と母体回帰
4 詩的言語・女性・共同体の崩壊
第6章 ホーソーンと心霊主義
——『ブライズデイル・ロマンス』論Ⅱ
1 社会改革と時代精神
2 心霊主義という視点
3 「ベールの婦人」と心霊主義
4 心霊主義の隆盛と社会改革
5 精神の物質化という問題
6 父性なき共同体の崩壊
第7章 カトリシズムの誘惑と救済
——『大理石の牧神』をめぐって
1 カトリック世界とアメリカの孤児たち
2 「幸運な堕落」とミリアムの悲しみ
3 父なき娘たち——ミリアムとヒルダ
4 カトリックの信仰とヒルダの苦しみ
5 ケニヨンのカトリック巡礼
6 孤児たちの帰還
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引