佐治敬三 夢、大きく膨らませてみなはれ
父・鳥井信治郎が設立した寿屋(現・サントリー)を継承。なじみの薄かった洋酒の普及に努め、新しい生活文化を創り出した。また、鮮やかな文化事業戦略と社是「やってみなはれ」を掲げ、サントリー文化を花開かせた経営者の姿に、長年近くでみてきた著者が迫る。
[ここがポイント]
◎著者しか知りえないエピソードで人間・佐治敬三を描く
◎サントリー(寿屋)の貴重な広告図版を掲載
第一章 商都大阪の臍
––青は藍より出でて藍より青し
1 父と子––商いの遺伝子、そして道修町に生まれる
2 船場商人の流儀––信治郎と「学歴」
3 小西儀助商店––「青雲の志」に目覚める
4 明治40年4月1日––時代は大転換期
第二章 モダンの風と「郊外文化」
––昭和戦前期の「阪神間」
1 阪急宝塚線の雲雀丘へ––幼・少年期から青年時代
2 〈伝説〉の中の父・信治郎––「回想記」をたどる
3 鳥井三兄弟––語り継がれる兄弟のきずな
4 浪高・仏教青年会––河合栄治郎・リベラリズムの思潮
第三章 戦中・戦後、新たな出発
––「希望」という名のチャレンジ
1 学徒出陣、阪大理学部小竹教室––1冊の『文藝春秋』
2 ここも戦場だ––海軍技術将校としての3年間
3 復員、そして寿屋入社––敗戦という“リアル”に戦慄
4 アカデミズムと実践––喪失感の回復へ
第四章 創業者的な「二代目」として
––世の中に為すあらん
1 信治郎は徒手空拳で––「ススメ、ススメ!……」
2 『ホームサイエンス』の原風景––知られざる“傑作”
3 帝大理系卒の若き経営者––小林一三と〈商い〉の精神
4 人間の絆––黄金期の再来と『洋酒天国』の時代へ
第五章 理系の経営者
––経験・論理・閃き、様々なる意匠
1 近代化を育んだワイン––大正モダニズムと寿屋
2 伝統と革新——「大将」信治郎から理系の敬三へ
3 ウイスキー、飛躍へ——「舶来崇拝思想」との闘い
4 マーケティング戦略——『洋酒天国』と開高・山口・柳原
第六章 「逆風」とはこう闘う
——敢闘精神とは何か
1 ビール事業へ挑戦——「君はビールが売れる顔しとるな」
2 「経営」に大義あり——「やってみなはれ」と行動の哲学
3 総合力と集中力——「超酒類企業」という大構想
4 スタイルのある「経営」——骨太のリベラリズム
第七章 「コマは回ればシャンとするんや」
——「人間通」の経営学
1 佐治敬三の日本的経営——「生活文化企業」の実現へ
2 経営者の条件——行き詰まりからの脱出
3 「諸君!」上役をこき使おう——素朴なアイデア発想装置
第八章 誰のための会社か
——精神のエネルギー
1 グローバリズムの時代へ——「企業文化」と技術の力
2 パイオニア精神の一考察——会社の進化
3 財界活動とは何か——「コミュニティー」の推進力
第九章 「夢」は大きく
——「文化」を生みだす企業哲学
1 サントリーホールはなぜ成功したのか——カラヤンの助言
2 石橋を叩けば渡れない——出る杭を伸ばそう
3 逸材の孵卵器をつくる——「サントリー文化財団」
エピローグ 〈個〉を開くひと
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