冷戦後のNATO “ハイブリッド”同盟への挑戦
多国間同盟として始動したNATOは、冷戦終焉以降の国際情勢に対応し、本来の集団防衛機能に加え、「平和構築のための包括的アプローチ」による危機管理機能を求められることになった。この両目標を含む、多様な要請に応えることを期待される21世紀のNATOについて、本書は機能、任務、能力、そして主要加盟国の思惑という面から実態を検証し、今後期待される役割を展望する。
1 起 源
2 冷戦期の展開
3 冷戦後
4 NATOの組織
5 同盟国の負担と財政
6 本書の構成
第Ⅰ部 冷戦後のNATO変革
第1章 冷戦の終焉とNATOの模索(広瀬佳一)
1 冷戦の終焉と1991年戦略概念
2 政治的役割の模索:NACCとPfP
3 加盟国周辺の「域外」非5条任務
4 9.11テロとNATOのグローバル化
5 米欧関係の新たな展開:NATO=EU関係
第2章 東方拡大(広瀬佳一)
1 拡大の歴史的位相
2 冷戦後の第一次拡大
3 冷戦後の第二次拡大
4 さらなる拡大への可能性
第3章 軍事的変革(吉崎知典)
1 同盟変革の二つの位相
2 同盟としての脅威認識:危機管理から対テロ作戦へ
3 脅威への対処能力
4 米欧同盟の新たな役割分担
第Ⅱ部 同盟国の論理と思惑
第4章 アメリカのNATO戦略(渡部恒雄)
1 オバマ政権成立とNATOへの新しい期待
2 オバマ政権におけるアメリカの戦略思考のチェンジ
3 オバマ政権が主導したNATO戦略概念の見直し
4 新戦略概念が定義する新しいNATOのミッション
5 耐乏時代(Age of austerity)のNATOの改革とトランスフォーメーション
6 米欧が向き合うNATOの新しい課題
第5章 冷戦後のNATOと統一ドイツ(岩間陽子)
1 冷戦の終焉とドイツの安全保障
2 NATOとEUの東方拡大
3 バルカン紛争と危機管理・平和維持
4 イラク戦争と同盟の立て直し
5 欧州安全保障政策,アフガニスタン派兵とCaveat問題
6 ブッシュ政権からオバマ政権へ
7 NATOの新戦略概念とドイツ
8 新戦略概念とドイツの本音
第6章 フランスのNATO政策とその展開(小窪千早)
1 フランス外交の伝統とゴーリスム
2 冷戦後のフランスとNATO
3 サルコジ政権による変化とNATO軍事機構への復帰
4 NATO軍事機構復帰後のフランス
第7章 “大西洋派”ポーランドとNATO(広瀬佳一)
1 冷戦後の中・東欧の安全保障
2 “大西洋派”としてのポーランド:アメリカとの同盟
3 変化の兆し:「ヨーロッパ志向」を強める社会
4 グルジア紛争の衝撃とMD
5 2010年戦略概念とポーランド
第8章 エストニアの安全保障観とNATO(小森宏美)
1 冷戦後の安全保障状況を考える手がかりとしての認識
2 NATO加盟を希求した理由:歴史的背景
3 公的な安全保障観と世論
4 エストニア・NATO関係
5 NATO=ロシア関係とエストニア
第Ⅲ部 21世紀のNATO
第9章 国際安全保障環境の変化と2010年戦略概念(鶴岡路人)
1 変容する同盟と新たな戦略概念の模索
2 2010年戦略概念
3 2010年戦略概念を超えて
第10章 危機管理(吉崎知典)
1 「非5条任務」としての危機管理
2 「世界テロ戦争」の時代:ISAF指揮と民軍一体化の推進
3 能力構築としての治安部門改革
4 新たな役割分担:リビアでの「文民の保護」と同盟の将来
第11章 パートナーシップ(小林正英)
1 協調的安全保障とパートナーシップ
2 他の国際機関との関係
3 パートナー諸国との関係
4 拡大を超えて
終 章 “ハイブリッド同盟”のゆくえ(広瀬佳一・吉崎知典)
1 2010年戦略概念の歴史的位相
2 集団防衛の虚と実
3 危機管理のディレンマ
4 日本とNATO
NATO関連資料
NATO主要年表
あとがき
人名索引
事項索引