三池炭鉱炭じん爆発事故に見る災害福祉の視座 生活問題と社会政策に残された課題
わが国戦後最大の労働災害事故である三池炭鉱三川鉱炭じん爆発事故(1983〔昭和38〕年,死者458名)を取り上げ,被災者世帯の半世紀近くに及ぶ苦難の生活状況を明らかにするとともに,残された生存者(839名)も健康被害に何故苦しめられ,何故不十分極まりない救済しかされなかったのか。本書は,その理由・背景を追及することによって,労働災害に対し果たした(果たしえなかった)「社会福祉の視座」を,被災者の「生活問題」の側面から論述する。
序 章 労働災害と社会福祉
1 労働災害の現状と生活問題
2 生活問題把握のための視点と研究方法
3 三池炭鉱炭じん爆発事故に学ぶ意義
4 本書の構成
第Ⅰ章 事故の背景
1 戦前における石炭産業の発展と三池炭鉱
2 戦後における石炭産業の復興と三池炭鉱
3 石炭政策大綱(第一次石炭政策)と三井鉱山第三次合理化
第Ⅱ章 三池炭鉱炭じん爆発事故の発生と被害
1 三池炭鉱炭じん爆発事故の発生
2 事故後の政府・会社・労働組合による対応
第Ⅲ章 医療と職場復帰に見る被災者世帯の生活問題要因
1 被災者医療の問題点
2 職場復帰
3 責任の所在
第Ⅲ章 生活問題に対する被災者と家族の抵抗
1 被災者世帯の生活状況
2 生活問題に対する被災者と家族のたたかい
3 CO闘争における支援団体と三池労組の動向
第Ⅳ章 被災者世帯の生活問題構造分析
1 分析の目的と方法
2 分析結果
3 生活問題の所在と構造
第Ⅳ章 高齢期を迎えた被災者の現況と被災者医療の課題
1 被災者の現況
2 被災者医療に見る現行医療施策の問題と被災者運動
第Ⅴ章 高齢期を迎えた被災者世帯の生活問題
1 調査目的と方法
2 事 例
3 事例分析
第Ⅵ章 被災者世帯の生活問題に見る労災補償制度のあり方
1 労災補償制度の現状
2 社会復帰促進事業と被災者の関係
3 被災者世帯の生活問題から見た労災補償制度の課題
第Ⅶ章 被災者世帯の生活問題に関する多面的分析
1 三池炭鉱労働者に見る生活基盤の脆弱性
2 被災者世帯に見る生活問題の所在とその長期性・重層性
終 章 労働災害に対する社会福祉の視座
1 三川鉱炭じん爆発事故が内包する問題の普遍性
2 労働災害に対する社会福祉の役割
3 本書のまとめと残された課題
あとがき
資 料
1 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
2 CO患者および遺族の取り扱いに関する協定書
3 確認書・確認メモ
参考文献/索引