15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史
現在まで続くヨーロッパ文明の要素の多くは,中世に北フランス,ドイツ西部,北イタリアなどで生まれ,ヨーロッパ全域に普及した。本書は,このような中世ヨーロッパ文明を,宗教,政治,交易,衣食住,芸術など15のテーマから読み解く。
[ここがポイント]
◎ テーマ別に現代ヨーロッパ文明の起源をたどれる,従来の時代順・国別の概説書とは異なる新たな中世
史概説テキスト
◎ 衣食住や文化など,歴史が苦手な学生でも興味をひかれやすいテーマが盛り込まれている
第Ⅰ部 キリスト教世界の成立
第1章 キリスト教化と西欧世界の形成(多田 哲)
1 ローマ・カトリックとキリスト教化
2 各地域のキリスト教化の様相
3 キリスト教化の初期段階
4 慣習のキリスト教化
5 心のキリスト教化へ
コラム1 聖人・聖遺物崇敬とキリスト教化
第2章 ローマ・カトリック教会の発展(甚野尚志)
1 教会改革の時代
2 ラテン・キリスト教世界の拡大
3 教皇権の発展
4 信仰の内面化
コラム2 「東西教会の分離」の意味
第3章 中世後期の宗教生活(印出忠夫)
1 小教区から見た宗教生活
2 中世の小教区の時間的・空間的枠組み
3 中世後期の小教区の現実
4 死後の魂の救い
コラム3 永遠のミサと累積ミサ
——彼岸の会計学をどう見るか
第Ⅱ部 統治の方法
第4章 戦争の技術と社会(堀越宏一)
1 中世ヨーロッパ社会と戦争
2 騎士と騎士道文化
3 城と天守塔
4 大砲と常備軍の戦争
——戦争の中央集権化と近世化
コラム4 ウェゲティウス『軍事覚書』と中世ヨーロッパ
第5章 貴族身分と封建制(桑野 聡)
1 西欧封建社会の形成
2 新しい貴族家門の出現と西欧の拡大
3 ヨーロッパ文化としての貴族文化
コラム5 ハインリヒ獅子公から見える家門意識の形成
第6章 文書と法による統治(岡崎 敦)
1 口頭所作儀礼・文字・テクスト
2 法秩序と文字
3 実務と文字
4 文字の意義
コラム6 書物と読書の中世ヨーロッパ
第Ⅲ部 農業生産と交易
第7章 西欧的農業の誕生(丹下 栄)
1 「西欧的農業」とは何か
2 西欧的農業の萌芽
3 中世農業革命と大開墾
4 西欧的農業の見直し
コラム7 所領明細帳と「ジェンダー」
第8章 都市という環境(徳橋 曜)
1 都市のヨーロッパ
2 都市の政治と文化
3 都市という空間
4 都市環境
5 受け継がれる自治意識
コラム8 中世から近世のヴェネツィアの環境意識
第9章 ラテン・ヨーロッパの辺境と征服・入植運動(足立 孝)
1 「辺境」の生成
2 征服・分配・入植
3 理念と現実
コラム9 アンダルス社会から封建社会へ
第Ⅳ部 人々の生活
第10章 衣服とファッション(徳井淑子)
1 ヨーロッパ服飾の誕生
2 社会表象としての衣服
3 文化表象としての衣服
コラム10 中世の子ども服
第11章 融合する食文化(山辺規子)
1 二つの食文化の出会い
2 時代変遷
3 中世ヨーロッパの食の特徴
4 節食と大食
5 宮廷の宴会とマナー
6 中世における食の思想
コラム11 『健康全書(タクイヌム・サニターティス)』
第12章 都市と農村の住居(堀越宏一)
1 中世ヨーロッパの建築
2 中世都市の住居
3 中世農村の住居
コラム12 ロマネスク式の町家と装飾窓
第Ⅴ部 文化と芸術
第13章 知の復興と書物の変容(甚野尚志)
1 「12世紀ルネサンス」と大学の成立
2 古典テクストと注釈
3 参照装置の発明
4 中世にはじまる「ルネサンス」
コラム13 シャルル五世の図書室
第14章 見えないものへのまなざしと美術(木俣元一)
1 中世美術の機能
2 彫像と人々のまなざし
3 黙示録の挿絵とヨハネの幻
4 聖遺物と見えないもの
5 中世美術の新たな理解に向けて
コラム14 エクレシアとシナゴーガの彫像
第15章 ヨーロッパ音楽の黎明(那須輝彦)
1 古典古代とキリスト教
2 カロリング・ルネサンスとグレゴリオ聖歌
3 グレゴリオ聖歌の装飾
4 14世紀以後
コラム15 元祖《ドレミの歌》
あとがき
人名・事項索引