日本文学史 古代・中世編
日本の古代・中世文学はいかにして生まれ、どのように展開したのか。現代まで伝えられてきたその魅力の源はどこにあるのか。本書では、万葉集、源氏物語、古今集・新古今集、平家物語といった、従来からの文学に加え、神話、歴史物語、絵画、古典註釈といった領域にも目配りをして、新たな文学史を組み立てる。最新の研究成果を反映した待望の通史。
[ここがポイント]
◎ 古代・中世文学の世界とその魅力が一冊で分かる
◎ 最新の研究成果を盛り込んだ待望の通史
序 章 古代・中世文学の世界(小峯和明)
1 文学とは何か――「うた」と「ものがたり」
2 文学のはじまり――文字と口頭伝承
3 文学史の時代区分と展開
4 古典とは何か――四つの位相
5 東アジアとの関連、世界の文学へ
6 文学の居場所、メディア
第Ⅰ部 古代の文学
古代の文学 概説(小峯和明)
第1章 記紀・風土記(斎藤英喜)
1 『古事記』『日本書紀』とは
2 古代「グローバリズム」と『記』『紀』『風土記』
3 『記』『紀』の神話世界を読む
4 『風土記』の神話伝承
コラム1 祝詞・祭文(増尾伸一郎)
第2章 万葉集(多田一臣)
1 『万葉集』の成立と時代区分
2 特異な巻々――第十六、東歌・防人歌
3 分水嶺としての柿本人麻呂
コラム2 仮名文字(神田龍身)
第3章 古今集と平安和歌(錦 仁)
1 和歌の思想
2 和歌史の構想
3 和歌史を学ぶ
コラム3 屏風歌と絵(岡﨑真紀子)
第4章 平安前期物語と日記(川村裕子)
1 平安前期物語と日記の流れ
2 作り物語
3 歌物語
4 日記文学
5 随筆『枕草子』
コラム4 紙と書物(浅田 徹)
第5章 源氏物語と平安後期物語(小嶋菜温子・馬場淳子)
1 『源氏物語』
2 平安後期物語の宇宙
コラム5 手紙・消息(竹村信治)
第6章 漢詩文・漢文学(佐藤道生)
1 王朝詩文の試み
2 一条天皇の句詩題
3 菅原文時以前――忠臣・道真の句題詩
4 文時の破題――典型と変型
5 双貫語の出現
6 破題がもたらしたもの
コラム6 口伝と聞書(菊地 仁)
第7章 日本霊異記から今昔物語集へ(千本英史)
1 「説話文学」の始発
2 南都における仏教説話集の展開
3 平安貴族たちの説話行為
4 社会矛盾の深まりと浄土教
5 「熒惑の精」大江匡房
6 『今昔物語集』の宇宙
コラム7 紀行・巡礼(大橋直義)
第Ⅱ部 中世の文学
中世の文学 概説(小峯和明)
第8章 新古今和歌集と中世和歌(渡部泰明)
1 鎌倉時代前期
2 鎌倉時代中・後期の和歌
3 南北朝時代の和歌
4 室町時代前期の和歌
5 戦国時代の和歌
コラム8 唱導・談義(渡辺麻里子)
第9章 説話集と法語(荒木 浩)
1 「説話文学」ということ
2 説話集の位置づけと仮名文集
3 談話の聞書と仮名の法語
4 「随筆文学」への途
コラム9 寺社縁起(恋田知子)
第10章 歴史物語と歴史叙述(深沢 徹)
1 歴史VS物語
2 王権簒奪者への讃歌――『栄華物語』の場合
3 ミネルヴァの梟――『大鏡』の場合
4 女に世界は救えるか――『今鏡』の場合
5 言語論的展開――『愚管抄』の場合
6 歴史の確信犯――『神皇正統記』の場合
コラム10 中世神話(渡辺匡一)
第11章 平家物語と太平記(鈴木 彰)
1 「乱世」の歴史を描く
2 『平家物語』の成立とその意義
3 『平家物語』の初期的流動と『太平記』の生成
4 継承・変容・再生をめぐる文学史
コラム11 未来記(原 克昭)
第12章 お伽草子と絵画(宮腰直人)
1 お伽草子の射程
2 14世紀のお伽草子
――寺社の文化圏をめぐって
3 15世紀のお伽草子――異類物と〈作者〉達
4 16世紀のお伽草子――読者の拡大
5 17世紀以降のお伽草子
――絵巻・絵入本と出版文化
コラム12 五山文学(堀川貴司)
第13章 歌謡と連歌(小野恭靖)
1 歌謡の展開
2 連歌の世界
コラム13 琉球文学(島村幸一)
第14章 能狂言と語り物(小林健二)
1 能が大成される以前の演劇
2 世阿弥による能の大成
3 世阿弥以降の能作の世界
4 狂言の歴史
5 室町期の語り物文芸、幸若舞曲
コラム14 キリシタン文学(小峯和明)
第15章 古典の注釈と学芸・学問(前田雅之)
1 古典と注釈
2 注釈の実態と担い手――古今伝授以前
3 注釈の実態と担い手――古今伝授以後
4 近世的注釈への展望
関連年表(長谷川範彰・目黒将史)
人名・作品索引