流動化する民主主義 先進８カ国におけるソーシャル・キャピタル

「社会関係資本」はどう変化したか

過去50年間に市民社会の性格はどのように変化したのか、またその要因は何か。本書では、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、日本という８カ国を取り上げ、現代の脱工業化社会において社会関係資本がどう変化しつつあるのかを論じる。第２次世界大戦終結後から20世紀末までの期間にわたる、初の定量的・定性的な検証の成果。（原書：Robert D. Putnam（ed）, Democracies in Flux: The Evolution of Social Capital in Contemporary Society, Oxford University Press, 2002.）

序　章　社会関係資本とは何か（ロバート・Ｄ・パットナムクリスティン・Ａ・ゴス）

第１章　イギリス——政府の役割と社会関係資本の分配（ピーター・Ａ・ホール）
　１ 社会関係資本の傾向
　２ 社会関係資本の水準の説明
　３ イギリスにおける社会関係資本と政治
　４ 結　論

第２章　アメリカ合衆国——特権を持つ者と周辺化される者の橋渡し？（ロバート・ウスナウ）
　１ 社会関係資本に関する議論
　２ 社会関係資本は減少しているか
　３ 傾向の説明
　４ 新たな形の社会関係資本？
　５ 変化の結果
　６ 結　論

第３章　アメリカ合衆国——会員組織から提唱集団へ（シーダ・スコッチポル）
　１ アメリカの結社はなぜ特殊だったのか
　２ 全体像についてのデータ
　３ 初期アメリカにおける自発的結社
　４ 工業化時代の市民的アメリカ
　５ 市民のアメリカの変容

第４章　フランス——新旧の市民的・社会的結束（ジャン=ピエール・ウォルム）
　１ フランスにおける社会関係資本
　２ 結社の形をとる社会関係資本
　３ その他の形の社会関係資本の変化のパターン
　４ 公共の領域における社会関係資本
　５ 結　論

第５章　ドイツ——社会関係資本の衰退？（クラウス・オッフェズザンネ・フュックス）
　１ 社会関係資本という概念の探求
　２ 社会関係資本の決定因——ドイツの場合
　３ 社会関係資本とガバナンスの質
　４ 社会関係資本と経済パフォーマンス
　５ 結　論

第６章　スペイン——内戦【シビル・ウォー】から市民社会【シビル・ソサエティ】へ（ヴィクトル・ペレス=ディアス）
　１ 市民的／非市民的社会関係資本
　２ 第一幕：スペイン内戦と勝者の世界もしくは非市民的な社会関係資本（1930〜50年代）
　３ 第二幕：巨大な変容と市民的連帯の出現（1950〜70年代）
　４ 第三幕：自由民主主義、ゆるやかな形の社会性、そして構造的緊張の管理（1970年代半ば〜90年代後半）
　５ 結　論——市民的／非市民的変容の皮肉

第７章　スウェーデン——社会民主主義国家における社会関係資本（ボー・ロートシュタイン）
　１ 模範的な民主主義から問題を抱えた民主主義へ
　２ 市民社会と大衆運動
　３ 組織団体の特徴：概観
　４ 組織団体の特徴における変容
　５ 比較の観点から見たスウェーデン市民社会
　６ 信頼の場
　７ 普遍的な福祉国家と市民社会
　８ 組織された社会関係資本と終焉を迎えたスウェーデン・モデル
　９ 組織された社会関係資本の破綻

第８章　オーストラリア——幸運な国をつくる（イヴァ・コックス）
　１ 公と私の契約
　２ 社会関係資本はオーストラリアで低下しているか
　３ 結　論

第９章　日　本——社会関係資本の基盤拡充（猪口　孝）
　１ 事業所センサスに見られる傾向
　２ 生活時間調査に見られる傾向
　３ 世論調査に見られる政治への信頼
　４ 社会関係資本と社会的／制度的成果
　５ 社会関係資本と参加
　６ 社会学的な属性と参加
　７ 確認された動向についての妥当な説明
　８ 新千年紀へ向けて

終　章　拡大する不平等（ロバート・Ｄ・パットナム）
　１ 国別パターン
　２ 共通のテーマ


註
訳者あとがき——社会関係資本から見た民主主義の変容
人名・事項索引