生命倫理の教科書 何が問題なのか
「人間の自由」はどこまで拡大できるか
安楽死、人工妊娠中絶、脳死、遺伝子操作…「生命」をめぐる難題を考える、最良の道案内。
自然に対する「人間の自由」はどこまで拡大できるのか。「生命倫理」の名の下に総括される社会的問題群のうち、患者中心の新しい医療倫理、そして従来の倫理観では処理できない最先端の生命工学の問題を、どのように考えたらよいのか。本書では、生命倫理の諸問題に関する基礎知識を伝えたうえで、「自己決定権」と「生命操作」をキーワードに、現代人が取り組むべき難題に方向性を見出す。
〔ここがポイント〕
・安楽死、人工妊娠中絶、脳死、遺伝子操作…「生命」をめぐる難題はいまどうなっているのか。
・生命倫理の勉強を始めたい人のための最良の道案内。
序 章 なぜいま「生命」に関して「倫理」が問題となるのか(黒崎 剛)
1 「生命」に関わる倫理と哲学の要求
2 「生命」に関する倫理の誕生――「バイオエシックス」と「生命倫理」
第I部 「自己決定権」をめぐる問題
第1章 患者の権利と「インフォームド・コンセント」(黒崎 剛/金澤秀嗣)
1 患者中心の医療の時代――「インフォームド・コンセント」とは何か
2 インフォームド・コンセントの思想
3 インフォームド・コンセント型医療において発生する問題
4 インフォームド・コンセント型医療に対する期待
第2章 安楽死と尊厳死(黒崎 剛/中畑邦夫)
1 安楽死
2 尊厳死
第3章 人工妊娠中絶をめぐる議論(黒崎 剛/竹村香織)
1 日本における人工妊娠中絶
2 中絶問題が社会的対立を生む国――アメリカ合衆国の例
3 中絶をめぐる議論――「生命の尊厳」と「女性の自己決定権」との対立
4 中絶をめぐる争いを調停できるか
第Ⅱ部 「生命操作」をめぐる問題
第4章 脳死と臓器移植(黒崎 剛)
1 「脳死」という思想問題――生と死をどこで線引きするか
2 臓器移植で何が議論になっているのか
3 暫定的考察
4 新しい局面――臓器移植から再生医療へ
第5章 「生殖革命」は人間の何を変えるのか(小島優子/黒崎 剛)
1 人工生殖技術についての基礎知識
2 「家族」関係に関わる問題
3 生殖ビジネス
4 不妊の「治療」を超えて
――作る側の理屈と生命操作の接点
第6章 遺伝子操作――人間的自由の最終局面(黒崎 剛)
1 遺伝子を知る,操作する
2 遺伝子を知ること,操作することへの不安
3 人間の遺伝子操作へ向けられた反対論
4 遺伝子操作に秘められた哲学的問題
5 資本主義と遺伝子――坂を滑るのか,未来に着地するのか
第Ⅲ部 「医療者の倫理」に関わる問題
第7章 医療倫理・臨床倫理・研究倫理(野村俊明)
1 医療倫理の原則
2 臨床倫理学
3 医療従事者―患者関係の変化とチーム医療の時代
4 研究倫理
巻末資料
あとがき
人名・事項索引