グローバル・マネーフローの実証分析 金融危機後の新たな課題
グローバル化と域内統合が同時に進展するなかで、いかにして金融危機が勃発したのか。また、グローバル・マネーフローはどのような変貌を遂げたのか。そして現在、その変動を監視・制御する方策が喫緊の課題となっている。
本書は、このような状況に鑑み、世界のマネーフローの実態を緻密に分析し、国際金融市場が抱える課題を浮き彫りにする。気鋭の経済学者が集った研究成果が今、明らかになる。
[ここがポイント]
◎ ユーロ危機とはどのような現象であったかを実証的に分析し、課題を明らかにする
◎ 国際資金循環の無軌道な動きにまかせるのではなく、安定的な循環を目指し、制御する方途を探る
序 章 グローバル・マネーフローのダイナミズム(藤田誠一・松林洋一・北野重人)
——金融危機後の新たな課題
1 本書の問題関心
2 2000年代におけるグローバル・マネーフローの変化
3 域内資金フローの変化とユーロ危機
4 金融危機後のグローバル・マネーフローの新たな潮流
第Ⅰ部 2000年代におけるグローバル・マネーフローの変化
第1章 国際資金フローの新たな動き(松林洋一)
——2000年代の潮流
1 はじめに——2000年代の国際資金フロー
2 国際資金フローの推移⑴——フローからの視点
3 国際資金フローの推移⑵——グロスからの視点
4 米国と欧州の資金取引
5 国際資金フローと金融危機
6 おわりに——複眼的考察の必要性
第2章 世界金融危機後のグローバル・インバランス(五百旗頭真吾)
——経常収支調整の地域格差とその要因
1 はじめに——危機後の経常収支不均衡
2 世界金融危機後にグローバル・インバランスは解消したか
3 経常収支は反転したか
4 経常収支反転は経済成長率を引き下げたか
5 おわりに——信用成長と経常収支の反転
第Ⅱ部 域内資金フローの変化とユーロ危機
第3章 ユーロ圏の域内不均衡と最適通貨圏の基準の内生性(福本幸男)
——産業構造・産業内貿易データによる検証
1 はじめに——最適通貨圏の基準の内生性から域内不均衡を考える
2 産業構造の類似性と欧州諸国を分析対象とした先行研究
3 ユーロ圏諸国のマクロ経済の主要ファンダメンタルズ
4 ユーロ圏諸国における産業構造と産業内貿易
5 おわりに——域内不均衡は改善するか
第4章 ユーロ圏の隠れた救済メカニズム(山本周吾)
——TARGET2インバランスの効果
1 はじめに——隠れた救済メカニズム
2 TARGET2の債権・債務のインバランス
3 TARGET2インバランスの救済効果
4 おわりに——ISバランス調整への示唆
第5章 2000年代における欧州金融機関の対米投資(松林洋一・藤田誠一・北野重人)
——ミクロデータによる検証
1 はじめに——2000年代の欧州金融機関
2 欧州金融機関の米国への与信
3 欧州金融機関の特徴
4 欧州金融機関の行動様式
5 金融危機後の欧州各国の対米与信
6 おわりに——グローバル・バンキングの興隆
第Ⅲ部 金融危機後のグローバル・マネーフローの新たな潮流
第6章 先進国金融政策の国際的波及(柴本昌彦)
——国際資金フローに対するグローバル・スピルオーバー効果
1 はじめに——先進国金融政策の新たな国際波及経路
2 グロスの国際資金フローの特徴の整理
3 グロスの資本流入及び流出のグローバルな影響
4 先進国金融政策の国際資金フローに対するグローバル・スピルオーバー効果
5 おわりに——金融政策運営の枠組みは変わるか
第7章 新興国の資本流出入とグローバル・ショック(星河武志・猪口真大)
——金融危機と資本収支
1 はじめに——国際的な資本の流入と流出
2 新興国の国際資本移動
3 実証分析
4 おわりに——新興国と先進国の資本流出入
第8章 近年の新興市場国における国際資本移動と金融政策(北野重人・高久賢也)
——小国開放経済のDSGEモデルによる分析
1 はじめに——金融政策とマクロプルーデンス政策
2 モデル
3 厚 生
4 おわりに——新興国に対する政策的含意
終 章 グローバル流動性の変動と制御(松林洋一)
——グローバル・プルーデンスの構築に向けて
1 はじめに——グローバル流動性について
2 グローバル流動性という概念について
3 グローバル流動性の定義
4 グローバル流動性の変動と制御
5 おわりに——グローバル・プルーデンスの構想
索 引