イタリア文化 55のキーワード
近代国家として誕生した19世紀後半を分岐点に据え、都市国家から国民国家への転換がもたらした矛盾を浮き彫りにし、この一大転換を準備した多様な文化的事件を複眼的に見つめ直す。イタリア文化の立体像を鮮やかに描き出した一冊。
[ここがポイント]
◎ 1項目を4ページで解説。
◎ 図版を豊富に掲載し、ビジュアルでも楽しめるよう工夫。
◎ 読者の関心をひくコラムを適宜配する。
◎ わかりやすく、親しみやすい文体、エッセイ風にかかれている。
第1章 「複数」のイタリア――都市国家のいま
1 イタリア人とイタリア語――150年来の課題
2 半島・島・地中海――どこまでがイタリアか
3 都市国家コムーネ――中世から現代へ
4 王国の伝統――誕生から王制廃止へ
5 カンパニリズモ――故郷への愛着と反撥
6 広場と街並――文化装置としての都市空間
7 南部問題と移民――「他者」としての南イタリア
〈コラム①〉守護聖人の祭
第2章 「単数」のイタリア――統一国家のゆくえ
8 ローマ――幻想としての「永遠の都」
9 リソルジメント――終わりなき祖国回復運動
10 国旗と国歌――トリコローレ、「マメーリの賛歌」
11 『ピノッキオの冒険』と『クオーレ』――児童文学が映す時代と社会
12 共和国憲法と大統領――国民投票、改憲
13 大学――その誕生から「ボローニャ宣言」へ
14 イタリアのワールドカップ――「カルチョ」の祭典
〈コラム②〉ピッツア・マルゲリータと三色旗
第3章 日常を彩る文化
15 カトリックとフォークロア――宗教と生活あるいは儀式と祭り
16 マリアとマンマ――矛盾を包み込む女性像
17 パスタとカフェ――「普遍」であることの新しさ
18 バカンス――貧しくてもゆたかな休暇
19 マフィア――カトリック社会のもうひとつの顔
20 ストライキと市民運動――イタリア社会の底力
21 イタリアで暮らす――クリエイティヴに生きるということ
〈コラム③〉「ラウレア(大学卒業)」という人生の節目
第4章 美から醜、醜から美へ
22 ルネサンス――調和の美をもとめて
23 バロック――美と醜の反転
24 ロマン派とオペラ――19世紀劇場芸術
25 美の理論――デコルムの系脈
26 「前衛」芸術――未来派から「貧しい芸術」へ
27 デザインとモード――工業製品から「メイド・イン・イタリー」まで
28 建築とフォルム―様式美の系譜
29 職人気質――美しさと美味しさをもとめて
〈コラム④〉「美しい肌」というステイタス
第5章 内なる「他者」と外からのまなざし
30 ヴァチカン――聖と俗のはざまで
31 神話と民話――生の意味をもとめて
32 ユダヤ系であること――イタリアのなかの異人
33 秘密結社――見えないイタリア史の背骨
34 特別自治州――少数が多様であるための特権と矛盾
35 ジェンダーと社会運動――フェミニズムの軌跡
36 「南」の発見―ゲーテの見たイタリア
37 イタリアらしさ――「おしゃれで陽気」は神話なのか
38 スローフード――環境と食のあり方の革新へ
〈コラム⑤〉「アルバレシュ」という内なる他者
第6章 異端という天才
39 ダンテ――『神曲』の世界
40 レオナルド――天才伝説はつくられたのか
41 ガリレオ――動詞としての科学
42 ブルーノ――異端による多中心性の哲学
43 フェルミとマヨラナ――原子物理学をめぐる可能性と謎
44 カルヴィーノ――あたらしい小説と戦後
45 フィレンツェと詩人――文学のはじまりとおわり
46 アントニオーニ――「不毛」の映画
〈コラム⑥〉放浪という罪
第7章 〈イタリア人〉をつくる
47 トラスフォルミズモ――右派と左派の乗合国家
48 ファシズムとレジスタンス――「解放」という歴史認識
49 鉛の時代――テロリズムのイタリア
50 共産党解体とベルルスコニズモ――新たな政治家のすがた
51 汚職――日常を覆す「汚れた手(タンジェントーポリ)」と「きれいな手(マーニ・プリーテ)」
52 移民問題――「ヴクンプラ」からボートピープルまで
53 プレカリアートと人材流失――働くとは何か
54 EUとイタリア――平和で豊かな欧州を目指して
55 イタリアと日本――交流の700年
〈コラム⑦〉移民をめぐる映画
略年表/参考文献/写真・図版出典一覧/事項索引/人名索引