住民主権型減災のまちづくり 阪神・淡路大震災に学び南海トラフ地震に備える
阪神・淡路大震災と東日本大震災は、「災害列島」日本を改めて認識させた。しかも、超大規模災害に対して国家が防災の全てを担うことから、被害を最小化する「減災」対策を講じる政策へ転換した。今や「自助」や「共助」が自明となっている。本書では、阪神・淡路大震災において「住民主権型」まちづくりが創造的復興を導いた経験をもとに、主権者である住民と行政が「協働」で計画を作り対策を講じることを提言する。
[ここがポイント]
◎ 住民主権型の減災まちづくりとは何か。
◎ 神戸市で阪神・淡路大震災からの復興の実務経験を積んできた著者による提言。
第1章 阪神・淡路大震災からの復興と「失われた20年」
1 阪神・淡路大震災からの復興の16年間
2 震災で脆くも崩れた「安全神話」
3 3つの神話の崩壊が阪神・淡路大震災の復興過程に与えた影響
第2章 阪神・淡路大震災の発生と被災直後の概要
1 阪神・淡路大震災の発生
2 建物倒壊被害とその特徴
3 火災による被害の集中と要因
4 複合的要因による被害の拡大――被災地での初動体制の遅れ
第3章 「2段階都市計画」が開いた制度変革の扉
1 震災復興における行政の責務
2 窮余の策としての「2段階都市計画」
3 復興都市計画の公表
4 「2段階都市計画」制度の誕生
5 住民主権型都市計画の新たな地平を開いた「2段階都市計画」
第4章 住民主体型事業を支える神戸市まちづくり条例
1 神戸市まちづくり条例の制定と住民参加の推進
2 条例制定までの紆余曲折の経緯
3 神戸市独自のまちづくり条例の誕生
4 神戸市まちづくり条例は「2段階都市計画」に適合し支えた
5 神戸市まちづくり条例の先見性――委任条例の部分も吸収
6 住民主権型まちづくりの基底となる条例へ
第5章 「被災市街地復興特別措置法」の制定と意義
――効率追求から安全追求へ
1 「被災市街地復興特別措置法」の制定
2 「被災市街地復興特別措置法」施行の効果
3 東日本大震災での特別措置法の適用
第6章 「住民参加型」から「住民主権型」まちづくりへ
1 「住民主権型」まちづくりの始まり
2 「まちづくり協議会」の設立
3 まちづくりコンサルタント及び専門家の派遣によるサポート
4 「まちづくり提案」を契機として「住民主体型」まちづくりへ
5 試されたプラットフォーム
――六甲道駅北地区の第2段階の都市計画の事例
6 協議会からの「まちづくり提案」と第2段階の都市計画へ
7 「住民参加型」から「住民主体型」まちづくりへの移行
第7章 「住民主権型」まちづくりの確立
1 第2段階の都市計画の進め方
2 松本地区のせせらぎの設置
3 復興事業展開後の新たなまちづくり提案
4 「住民主権型」による特徴あるまちづくり
5 「住民主権型」のルールによるまちづくり
6 「住民主権型」まちづくりを支えたコンサルタント・専門家の役割
7 震災復興土地区画整理事業の完了
第8章 防災行政の責任と新しい課題
――東日本大震災の復興状況から
1 巨大地震、巨大津波が懸念される時代へ
2 巨大災害の防災対策は「減災」で補完――その方策について
3 東日本大震災の復興の現状と課題
4 「減災型」復興事業へ――チャレンジしなくていいのか
第9章 災害対策基本法の大改正
――国・都道府県・市町村・住民の4者体制に
1 防災行政の基本法「災害対策基本法」の制定を振り返る
2 阪神・淡路大震災の発生と政府の応急体制の見直し
3 東日本大震災による災害対策基本法の大改正
4 災害への対応は国・都道府県・市町村・住民の4者体制に
第10章 住民主権型「減災」のまちづくり
1 「減災」のまちづくりとは
2 「減災」のまちづくりの提案までの手順
3 「減災」のまちづくりの具体的な仕組み
4 「減災」のまちづくりの条件
5 住民主権型の津波避難ビルの建設
6 住民主権型による「減災」のまちづくり実現のために
7 住民主権型による「減災」のまちづくり
――「コンパクト・シティ」の実現へ
(参考)住民主権型「まちづくり(手続き)条例」の骨子案
結びにかえて
あとがき
参考文献
索 引