東アジアのスポーツ・ナショナリズム 国家戦略と国際協調のはざまで
本書は東アジア地域において、スポーツ・ナショナリズムがどのようにつくり出され、いかなる社会的・文化的機能を果たしてきたのかを比較分析し、スポーツの社会的意義をグローバルで未来志向的な展望から捉え直す。スポーツ・ナショナリズムの基本文献となる書である。
[ここがポイント]
◎ 日中韓の政策担当者、スポーツ社会学者等による執筆。
◎ 2020年東京オリンピック開催を機に、より一層注目されるテーマ。
◎ スポーツ・ナショナリズムの基本文献となる書
1 なぜスポーツ・ナショナリズムか
2 ナショナリズムとスポーツ
3 東アジアという「場所」
4 スポーツと「体育」
5 本書の構成
第Ⅰ部 社会から見る
第1章 韓国の神話的イコン「キム・ヨナ」(コ・ウナ)
——「企業ナショナリズム」の誕生
1 スポーツ英雄からセレブリティへ
2 国民英雄の建設——国家主義とメディア効果
3 グローバル・ヨナ——グローバル化(globalization)と国家主義(nationalism)の出会い
4 企業ナショナリズムとスポーツ・セレブリティ——広告女王キム・ヨナ
5 セレブリティの絶え間ない再生産——メディアの役割と消費主義の未来
6 変容し続けるイメージの行方
第2章 日本人トップアスリートの「手記」(小石原美保)
——揺らぐアイデンティティとナショナリズムの変容
1 メディアが生みだすナショナリズム
2 1920〜30年代のアスリート手記・活字言説
3 1960年代のアスリート・指導者手記
4 21世紀のスポーツ・ナショナリズム
5 スポーツ・ナショナリズムの脱構築に向けて
第3章 日本の武道(坂上康博)
——ナショナリズムの軌跡
1 伝統的民族スポーツとナショナリズム
2 戦前・戦中の武道
3 武道の禁止とスポーツとしての再生
4 噴出するナショナリズム
5 伝統文化としての武道への回帰
6 今後の研究のために
第4章 中国カンフー映画(呂洲翔、張綺、凡紅)
——武術に投影されたナショナリズム
1 記憶の意味
2 はじまり(1920〜30年代)
3 中国伝統の復権(1930〜50年代)
4 ナショナリズムと中国カンフー映画の変容(1960〜70年代)
5 反帝国主義的感情の強化(1980年代)
6 黄飛鴻とその後継者——移りゆく防御的ナショナリズム
7 〈中国人らしさ〉の投影
第Ⅱ部 政策から見る
第5章 韓国のスポーツ政策(イ・ヨンシク)
——スポーツビジョン2018に向けて
1 韓国における体育政策の必要性
2 韓国における体育問題と政策対案
3 スポーツ(体育)の領域拡張と政策含意
4 スポーツ政策重点分野の変遷
5 体育政策推進環境(組織、予算、法)の現況および展望
6 最近の体育政策の中長期計画事例
第6章 中国のスポーツ政策(鮑明曉)
——スポーツ大国からスポーツ強国へ
1 改革開放とスポーツ事業
2 中国スポーツ事業が直面している課題
3 新たな改革が遭遇する抵抗と代価
4 新たなスポーツ改革の重点領域
第7章 日本のスポーツ政策と国際競技大会(田原淳子)
——競技スポーツ政策と多角的なスポーツ交流
1 日本におけるスポーツ政策の視座
2 スポーツ政策に関係する省庁とその役割
3 競技スポーツ政策の歩みと国際競技大会
4 スポーツを通じた外交的国際交流
5 国際競技大会のインパクトと総合力としてのスポーツ文化
第8章 東アジアを貫く時間軸とスポーツ政策(菊 幸一)
1 「東アジア」の地政学と「遅れ」の意識
2 戦後東アジアのオリンピック開催のズレが意味するもの
3 オリンピック開催から見たスポーツ政策の歴史的相違
4 ポスト・オリンピックとスポーツ・ナショナリズムへの期待
5 スポーツ・ナショナリズムを超えて
あとがき
索 引