現代社会理論の変貌 せめぎ合う公共圏
本書は、多様な切り口から構成されている。その領域は、哲学や社会思想、経済学、社会学、そして音楽やスポーツ、宗教などから、社会総体を「統合・和解と対立・抗争との緊張関係」で捉える。また、混迷の度を深めている現代社会・政治の諸問題や沸騰する社会問題に対して回答する試みである。立命館大学産業社会学部創設50周年記念学術叢書の一冊。
◎ 混迷する社会問題に公共圏からの回答を試みる。
◎ 社会総体を「統合・和解と対立・抗争との緊張関係」で捉える。
序 章 現代社会理論と公共圏
1 公共圏の問題設定
2 本書の構成
第1章 ホネット『自由の権利』における「社会的自由」の境位
――歴史における社会闘争の意義
1 『自由の権利』における「規範的再構成」の方法と社会闘争の意味
2 3つの自由モデルと「規範的再構成」
3 社会的自由の3つの領域
4 ホネット社会的自由論への評価
5 ホネット社会的自由論の今後の展開可能性
第2章 政治的ヘゲモニーから知的・道徳的ヘゲモニーへ
――グラムシ『獄中ノート』におけるヘゲモニー論の諸相
1 ヘゲモニー論へのプレリュード――政治的指導の契機と文化的指導の契機
2 『獄中ノート』におけるヘゲモニー論の変容
――Q1§44A草稿への加筆修正問題をめぐって
3 ヘゲモニー論の理論的意義・実践的意義
――有機的ヘゲモニーと自発的・能動的同意
第3章 「労働すること」と「仕事すること」
――「世界疎外」の時代に抗して
1 「労働」と「仕事」の定義
2 「労働」と「仕事」の曖昧化
3 近代における「労働」観の反転と「世界疎外」の進行…
4 「社会的なもの」の膨張と「増殖的な労働」
5 「世界」の再構築にむけて
6 労働・仕事・活動のバランスを取り戻すために
第4章 ディシプリンとしての経済学と制度アプローチの学際的可能性
――レギュラシオン学派の言説から
1 学際的視点から見たその核心
2 行為とその活動諸空間
3 レギュラシオン学派をめぐる日本での受容と展開
4 学際的対話とその方向性,将来性をめぐって
第5章 空間,文化,運動
――カルチュラル・スタディーズと空間の社会理論のために
1 カルチュラル・スタディーズから空間の社会理論へ
2 空間の社会理論
3 都市と空間における文化,実践,運動
4 カルチュラル・スタディーズと空間の社会理論のために
第6章 スポーツを「闘争のアリーナ」として読み解く
――エリアス・ブルデュー・ハーグリーヴズのスポーツ研究を導きに
1 動き始めたオリンピック協力体制の構築
2 エリアスと「スポーツ」――「興奮の探求」としてのスポーツ
3 ブルデューと「スポーツ」――スポーツ界の成立とその「政治」への関心
4 ハーグリーヴズと「スポーツ」――スポーツ実践の「主体」の捉え直し
5 新たなスポーツを求めて――飽くなき「興奮の探求」
第7章 ポスト・セキュラー論で読む宗教判例
――ハーバーマスとテイラーの議論から――
1 ハーバーマスとテイラー
2 小泉首相の靖国神社参拝
3 テイラー3原則の難点
4 靖国神社国家護持運動における「翻訳」
5 限界と可能性
第8章 アメリカ批判理論の最前線
――ナンシー・フレイザーへのインタヴュー
1 アクティヴィストとしての出発点
2 資本主義の総体的把握――マルクス読解
3 ポスト・ウェストファリア的正義のフレーム――「代表」
4 トランスナショナルな公共圏
あとがき
事項・人名索引