子どもと保育者の物語によりそう巡回相談 発達がわかる、保育が面白くなる
本書は,各々の地域の状況に合わせながら,子どもや保護者,保育者それぞれの物語によりそって保育の創造を支援する巡回相談の実践事例を紹介しています。その中で,他者との関係の中で生きている子どもについて,そこに生まれる物語に着目して理解する,新しい時代の保育と巡回相談のあり方を考えます。子ども・保護者・保育者・相談員が,ともによりよい保育をつくっていくためのヒントがここにあります。
[ここがポイント]
◎各地域の事情に合わせて行っている巡回相談について詳解している
◎ 保育者・巡回相談員・保護者が協同している様子がよくわかる
序 章 子どもと保育の物語と巡回相談
──過去・現在・未来(浜谷直人)
1 思わぬ保育の展開と巡回相談
2 ローカルデザイン
──保育の実践力が豊かになるための応援団
3 物語という視点
──子どもと保育者が物語の主人公になる
4 物語としての保育実践
──思わぬことが起こるから保育は楽しい
5 「客観的に子どもを理解する」とは?
──物語と対極的な子ども理解
6 エビデンス重視の意義と限界
7 巡回相談における問題状況を解釈する2つの志向性の軸
8 個としての子どもを客観的に説明する巡回相談から、関係と物語を解釈する巡回相談へ
──第二世代の巡回相談
9 子ども理解の的確さと妥当性
──解釈の豊かさと複数性
10 物語的アプローチ
──支援を考える前に、まず豊かに解釈する
第1章 保育者とともに子どもと保育の物語を紡ぐ
──豊島区の巡回相談(五十嵐元子・豊島区保育園保育士)
1 日々の保育を楽しむことを支援する
2 保育者とともにつくりあげてきた巡回相談
3 クラスを対象にした巡回相談への移行
──現在の巡回相談のシステム
4 一人ひとりの持ち味を楽しみ、子ども同士をつなぐ
──巡回相談の事例より
5 巡回相談における豊島区らしさ
6 3人の保育者からの声
第2章 保育者と相談員の価値観を通して物語を探る
──八王子市の巡回相談(飯野雄大)
1 観察と検査を通して子どもの姿を立体的に描く
2 絵が苦手で集団に参加しようとしない雅人君の相談
3 検査場面での虫の絵をめぐる雅人君の物語
4 偶然から子どもの新たな一面を発見する
5 保育者によりそいながら子どもの物語を再編する
6 クラスの関係性から生まれる物語
7 価値観が支援を方向づける
8 保育者と相談員が価値観を振り返りながら物語に出会う
第3章 保護者の物語から保育者との連携が見えてくる
──八王子市の巡回相談(芦澤清音)
1 巡回相談を保護者の視点から捉え直す
2 保護者から見た巡回相談
3 保護者の物語から見た連携の意味
第4章 保育者の「振り返り」からスタートする
──鳥取市の巡回相談(田丸尚美)
1 なぜ、あらたな巡回相談が求められたか
2 保育者の「気がかり」を聴き取って、保育者の物語にふれる
3 相談をきっかけに「振り返り」「語る」
──沙希ちゃんの事例から
4 相談を通して保育者の「気がかり」を捉え直す
第5章 個の視点と集団の視点から子どもを捉える
──大津市の巡回相談(髙*田智行)
1 発達相談を重視する巡回相談
2 「ともに育ち合う保育」を目指して
3 巡回相談の実際
4 巡回相談が目指すもの
第6章 保育者が期待する巡回相談とは
──大津市の保育相談員の経験から(野本千明)
1 保育の専門家は、やはり保育者
2 保育者が保育のプロとなるために
3 巡回相談が、保育・保育者・園を変える
4 同行して気づいた巡回相談のあり方
第7章 保育者の労苦に共感し保護者と連携する巡回相談──発達保障論からの実践をもとにして(別府悦子)
1 保育者の労苦に共感し、ユーザー視点に立つ巡回相談とは
2 子どもの発達の理解と対応についての専門性を発揮する
3 明日からの実践や子育ての希望を生み出す相談のために
第8章 加配保育者を主人公にした子どもと保育者の物語(川尻泰樹)
1 加配保育者とその物語
2 支援児へのかかわりを振り返る
──加配保育者佳代子先生の実践
3 実君と佳代子先生の物語
4 物語を持ち寄り、物語が交じり合う巡回相談
──独白的な場から対話的な場へ
終 章 これからの巡回相談の役割と意義(三山 岳)
1 巡回相談は保育現場で何を支援するのか
2 巡回相談が対象とする「障がい」の理解
3 発達支援からみた「物語」の必要性
4 保育支援からみた「物語」の必要性
5 「物語」の役割を教えてくれたエピソード
6 本書の事例の中の「物語」
7 「物語」の視点を発達支援や保育に生かすということ
索 引