社会理論の再興 社会システム論と再帰的自己組織性を超えて
本書は、社会システム論と自己組織性論とを軸にした、社会学の本質に迫る論考の集成である。21世紀の社会理論のありかたを鋭く問い、社会学における理論の復権を告げる。
[ここがポイント]
◎ 第一線の研究者が社会理論の現地点を説く
◎ 社会システム論と自己組織性論を縦横に論じる
第Ⅰ部 社会システム論とモダニティ
第1章 社会システム論からモダニティを再検討する(今田高俊)
1 機能分化としてのモダニティ
2 機能分化の類型学――パーソンズ的社会システム論の特徴
3 制御としての機能論理――前期ルーマン理論の射程
4 自己言及図式はモダニティと両立するか――後期ルーマン理論にみる両義性
5 モダニティの綻び、あるいは再びのパラダイム転換
第2章 モダニティと制度論(盛山和夫)
1 制度の学としての社会学
2 社会学における説明の論理とその問題点
3 自生的秩序論とその問題
4 制度研究の課題
第3章 モダニティと社会学(友枝敏雄)
――「社会的なるもの」の把握をめざして
1 社会学の誕生
2 「社会的なるもの」の探究
3 「社会的なるもの」の客観的測定は可能か
第4章 自己産出系の公理論(佐藤俊樹)
――システム論のsyntaxとsemantics
1 自己産出系論への公理論的アプローチ
2 syntaxとsemanticsの位置づけ
3 自己産出系論のsyntax
4 自己産出の形態
5 制度の経験的記述との関係
6 自己産出系論のsemantics
7 伝統的な行為論との接続
第5章 モダニティと意味(高橋 徹)
1 「古典近代」の終焉をめぐって
2 モダニティと意味
3 モダニティの命脈
第6章 近代と公共性(橋本 努)
――ハーバーマス批判の試み
1 ハーバーマスを超えて
2 民主主義のさまざまな意味
3 コミュニケーション概念の批判的検討
4 社会的国家を批判する視点
5 国家市民的自律の検討
第7章 東アジア型ハイブリッド・モダニティ?(園田茂人)
――在中国日韓台企業の比較が示唆する現実
1 中国の台頭という歴史的経験
2 調査のデザインとデータの形状
3 仮説と分析結果
4 結果の解釈
5 グローバル化の中の個別主義的紐帯
第8章 「評価国家」における統治の構造(町村敬志)
――政治的合理性・プログラム・テクノロジー
1 「小さな政府」は本当に「小さい」のか
2 「評価」をめぐる理論的課題
3 「評価国家」という概念
4 「評価」過程の分析枠組み
5 「評価国家」概念を検証する
6 評価国家の先にあるもの
第Ⅱ部 再帰的自己組織性論とポストモダン
第9章 自己組織性と社会のメタモルフォーゼ(今田高俊)
1 内破による自己組織化
2 自己組織性のリアリティ――ゆらぎと自己言及
3 社会理論への含意
4 近代のメタモルフォーゼ――機能優先から意味充実へ
5 社会のパラダイムシフト
6 意味の文明の試練――ポストモダンとリスク社会
第10章 自己組織性と言語ゲーム(橋爪大三郎)
1 自己組織システムとは何か
2 言語ゲームとは何か
3 社会はルールか、システムか
第11章 自己組織性と合理的選択(佐藤嘉倫)
1 自己組織性理論の重要性と問題点
2 合理的選択理論の基本的論理構造
3 合理的選択理論によるミクロ―マクロ移行の説明
4 自省的行為と合理的選択理論
5 エージェント・ベースト・モデルの可能性
6 新しい社会理論に向けて
第12章 自己組織化の普遍性と歴史性(正村俊之)
――自律・他律・共律
1 自己組織化の諸相
2 自己組織化のプレ・モダン的様式
3 自己組織化のモダン的様式
4 モダン的自己組織化様式の変容
第13章 自己組織性と社会システム(徳安 彰)
――主体のありかをめぐる考察
1 自己組織化の主体をめぐる概念的なねじれ
2 社会システムと個人の理論的関係
3 近代的構成物としての主体
4 主体とともに、あるいは主体の先に?
第14章 自己組織性とリスク・信頼(小松丈晃)
1 リスクのゆえの信頼問題――リスクは信頼を必要とする
2 信頼について――信頼はリスクを必要とする
3 自己言及的リスクのマネジメント
4 リスク管理と信頼リスク管理
第15章 日本における社会システム論の意義と未来(遠藤 薫)
――日本近代と自己組織性
1 グローバル化と文理融合
2 数理社会学と社会システム論
3 日本の社会学――普遍と個別/中心と周辺
4 柳田國男の常民論
5 戦後の日本社会学
6 未来に向けて
あとがき
索 引