関係の中で人は生きる 「接面」の人間学に向けて
“周囲の人と交わり共に生きる”ことへの関心を研究の出発点とし、「人の生きる現場に赴いてその生き様に触れ、私の意識体験を現象学的に反省することから人の生の本質に迫る」ことを研究目的としてきた著者の集大成ともいえる一冊。処女作から30年を経た今、関係発達、間主観性、両義性、相互主体性という著者の導き出した理論的柱とエピソード記述をめぐるエッセンスを概観したうえで、いまだ未整理だった「接面」の概念、「接面の当事者」という新しい構想をとりあげ、対人実践へとつなぐあり方を考える。
[ここがポイント]
◎ 関係発達、間主観性、両義性、主体、エピソード記述、接面という鯨岡理論の概念をまとめた、研究成果の集大成ともいえる書。
◎ 多様なエピソード記述から具体的に「接面」という概念を捉える。
◎ 保育・教育・障碍・看護・臨床・介護といった多岐にわたる領域を「接面の人間学」の視点で考える。
1 研究のスタートと基本となる考えの模索
2 「接面」の人間学に向けて
第1章 「接面」という概念が導かれるまで
1 現象学に惹かれる
2 関係発達という考え方に至るまで
3 関係発達論の第1主題:「間主観的に分かる」ということ
4 関係発達論の第2主題:両義性という考え方
5 関係発達論の第3主題:主体という概念
第2章 なぜ接面パラダイムなのか
1 「接面」の概念に至る経緯と二つの観察枠組みの違い
2 「接面」とは
3 エピソード記述と「接面」
4 「接面」と関係発達論の諸概念との関係
5 客観主義パラダイムと接面パラダイム
6 「接面」の人間学を展望する
第3章 「接面」とエピソード記述
1 「接面」、意識体験、エピソード記録
2 エピソードを描くことと「接面」
3 エピソード記述を読むことと「接面」
4 実践をエピソード記述に綴ることと「接面」
第4章 当事者研究のために
1 広義の「当事者研究」とは
2 書籍『障碍のある子とともに歩んだ20年』より
3 書籍『慢性腎疾患の子どもとその母親・家族の関係発達の諸相』より
4 論文「てんかんと発達障碍を抱えた子どもとその母親の関係発達の諸相」より
5 三つの当事者研究を読んで
文献一覧
あとがき