「軍事研究」の戦後史 科学者はどう向きあってきたか
「軍事研究に手を染めない」としてきた日本の学術界がいま揺らいでいる。防衛のための軍事研究は必要との主張が出てきたからだ。宇宙開発や、人工知能、バイオテクノロジーなど最先端の科学技術は、軍事にも民生にも役立つ(デュアルユース)、だからこれまでの方針は足かせになるという意見もある。これに対し本書は「軍事研究に手を染めない」方針がどのように確立し機能してきたのか、無理や限界がなかったのかを歴史に問い、新たな情況下で初心を生かす道を探る。
[ここがポイント]
◎「軍事研究」をめぐる評価が時代と共に変わりゆく様子がよくわかる。
◎軍事研究について歴史的視点に加え、第5章で今日の状況をどう考えるべきか、中立的な立場から検討を加える。
第1章 「軍事研究」前史――ダイナマイトから七三一部隊まで
1 欧米の科学者たち――戦争にどう向きあったか
2 日本の科学者たち――軍事研究が当たり前の時代に
第2章 冷戦がすすむなかで――大学が聖域になったとき
1 日本学術会議の声明
2 中谷宇吉郎が巻き起こした論争
3 科学者京都会議
4 東京大学で軍事研究か
第3章 ベトナム戦争の時代――「平和の目的に限り」の定着
1 米軍資金をめぐる問題
2 物理学会の「決議三」
3 「平和の目的に限り」の定着
4 ベトナム戦争とアメリカの科学者たち
第4章 新冷戦の時代――「平和の目的に限り」の裏で
1 「軍事」の拡大
2 第五回科学者京都会議
3 宇宙の軍事利用
4 大学人や研究者の声明・宣言
5 生物戦にかかわる研究か
第5章 冷戦終結後――進みゆく「デュアルユース」
1 宇宙の開発利用と安全保障
2 デュアルユースを梃子に
3 生命科学におけるデュアルユース
4 神経科学におけるデュアルユース
5 学術界の反応
第6章 軍事研究の是非を問う――何をどこまで認めるか
1 これまでをふりかえる
2 軍事研究はすべて否定されるべきか
3 歯止めをどうかけるか
4 科学技術の順調な発展のために
注
おわりに
年 表
人名・事項索引