ポスト〈カワイイ〉の文化社会学 女子たちの「新たな楽しみ」を探る
〈カワイイ〉が一般化した時代(=ポスト〈カワイイ〉)の女子文化のあり方を問う。〈カワイイ〉は一見すると古典的な女らしさのようにみえるが、実は、伝統的な規範の圧迫から抜け出して自分らしく生きたいと願う女子たちの希望の表れでもある。現代の女子たちは、より自由に〈カワイイ〉を楽しんでいるのである。本書では、いまもなお多様化と洗練化を続ける女子文化の現在について、丹念な調査・分析を通じて解明する。
[ここがポイント]
◎ メディアを通じて掲載された女子文化とは何であり、どのように展開しているのか。
◎ ゲーム、フェス、歴女、メイド…第一線の社会学者による調査分析。
第1章 〈カワイイ〉の銀河系(吉光正絵/西原麻里)
1 〈カワイイ〉の氾濫
2 グローバル化した〈カワイイ〉
3 〈カワイイ〉ファッションの台頭
4 〈カワイイ〉の源流探し
5 美術とデザインにおける〈カワイイ〉
6 〈カワイイ〉概念の大転換――実用的な〈カワイイ〉
7 〈カワイイ〉を発見するよろこび――女性オタクの〈萌え〉へのまなざし
8 ポスト〈カワイイ〉の時代
第2章 プリンセスになること、プリンセスであること――女性誌から読み解く現代の“理想”の姿(西原麻里)
1 〈プリンセス〉とは何者か
2 消費、イデオロギー、キャラクター/キャラ
3 プリンセスになること――努力型プリンセスである30代・40代女性
4 プリンセスであること――生まれながらのプリンセスである10代後半・20代前半女性
5 プリンセスはクイーンになれるか――はざまの世代・アラサー女性
コラム1 海外で働く日本人女性たちの取材から見えてきたもの(濱田真里)
コラム2 世界で婚活をして分かったこと(中村綾花)
第3章 女児とゲームの創造/想像的関わり――「女の子のためだけのゲーム雑誌」『ぴこぷり』に見る(秦 美香子)
1 女子とゲームについて考えるということ
2 女児向け雑誌とゲームの結び付き
3 女児向けゲーム雑誌『ぴこぷり』
4 プレイヤー=ゲーム世界で遊ぶ読者
第4章 越境する夏フェス女子――音楽とインターネットをめぐるインテグラルなアクション(永田夏来)
1 カリスマの伝説から長靴でのパーティーへ
2 ロックフェスのローカライズと〈男らしさ〉〈女らしさ〉
3 夏フェス女子の背景と経験
4 インテグラルなアクション――コンサートと夏フェス、映画とディズニーランド
コラム3 女子のアイドル語りの変遷(西森路代)
コラム4 社会運動を楽しむ台湾の女性たち(陳 怡禎)
第5章 女子の日常とロックのアンビバレントな関係(荒木菜穂)
1 「好きだけど、複雑」な気持ちから
2 ロック文化におけるジェンダー
3 「フェミ的女性」たちにとってのロック文化
4 「男性中心的文化」への女子の視線の可能性――フェミニズムの観点から
コラム5 60年代『コスモポリタン』、80年代「女の時代」、90年代Chick Culture〈女子文化〉からポストフェミニズムを語る――ヘレン・ガーリー・ブラウンと林真理子の再評価(吉岡愛子)
第6章 歴女と歴史コンテンツツーリズム――日本史を旅する女性たちと“ポップ”スピリチュアリズム(須川亜紀子)
1 歴史と女性ファン――趣味のクロスジェンダー化
2 旅と女性
3 「歴女」現象と“ポップ”スピリチュアリズム
4 「歴女」の社会文化的意味とは
コラム6 『毎日新聞』「現代女子論」を取材して(反橋希美)
第7章 都市のハロウィンを生み出した日本社会――需要される偶有的なコミュニケーション(松谷創一郎)
1 盛り上がる都市のハロウィン
2 ハロウィンの歴史
3 都市のハロウィン
4 ハロウィンの背景
5 都市と「キャラ」の関係
コラム7 Japan Expo(2015)に見られた日本文化受容の成熟(上松恵理子)
コラム8 グローバル化時代におけるタイ女性絵師の新しいコミュニケーション形態(パーワン・カーンソンジャイ)
第8章 オタク女子の「ホーム」――オタク的自己の承認の場としてのメイド喫茶(池田太臣)
1 メイド喫茶で働く意義――問題の所在
2 メイド喫茶という場所
3 メイド喫茶の成立と普及の経緯
4 Kカフェおよび大阪日本橋について
5 メイドスタイルへの意味づけ――インタビュー結果から(1)
6 メイド喫茶という場所の意味――インタビュー結果から(2)
7 オタク女子の「ホーム」
第9章 島ガールの語られ方と生き方――自分らしい手作りの島暮らし(吉光正絵)
1 〈カワイイ〉女性像による島のイメージ刷新
2 女性が島にもたらす新しい力
3 五島列島の島ガールたち
4 島ガールが繫ぐ世界
あとがき
事項索引
人名索引