会談への道筋を詳細な資料調査から浮き彫りにし、欧州開戦をめぐる緊迫の交渉実態を明らかにする。
著者 |
関 静雄 著
|
ジャンル |
世界史
|
シリーズ |
世界史 > MINERVA 西洋史ライブラリー 112
|
出版年月日 |
2017年11月10日
|
ISBN |
9784623080892 |
判型・ページ数 |
A5・572ページ |
定価 |
定価9,350円(本体8,500円+税) |
在庫 |
在庫あり |
1933年のナチス政権の成立から1939年のドイツのポーランド侵攻による第二次欧州戦争勃発に至るまでの、欧州社会の激動期において、「危機」と呼ばれる節目の時期が幾度かあった。本書はその中でも、ヒトラーのニュルンベルク演説、ズデーテン騒動を経て欧州戦争必至の様相を呈した1938年の「ミュンヘン9月危機」に焦点を当てる。そして、この間、四たび持たれたヒトラーとチェンバレンの直接会談を中心に、開戦か避戦をめぐる英独外交戦略の実像を明らかにする。
[ここがポイント]
◎ 欧州開戦直前の各国間の外交交渉の思惑を整理
◎ 4度にわたるチェンバレン・ヒトラー会談の実態を詳細な資料調査を基に、交錯する両者の駆け引きの思考と外交戦略を明らかにする。
はしがき
凡 例
第Ⅰ部 モラヴスカ・オストラヴァ事件
第1章 ズデーテン危機
1 欧州の暗雲
2 ヘンダーソン = ワイツゼッカー会談
3 ヘンダーソン = リッベントロップ会談
4 ヘンダーソンの「道義外交」
第2章 ヒトラー = ヘンライン会談
1 ヒトラー = ヘンライン「合意」
2 イギリス政府の反応
3 欺かれたイギリス
第3章 ベネシュの「第四計画」
1 イギリスの対ベネシュ加圧
2 ベネシュの捨身戦法
3 9月6日のプラハとロンドン
第4章 ズデーテン危機の暗雲再び
1 モラヴスカ・オストラヴァ事件と『タイムズ』社説
2 イギリス政府の対応如何?
第Ⅱ部 モラヴスカ・オストラヴァ事件後
第5章 事件後のイギリスの対応
1 プラハ交渉再開・促進への努力
2 「プランZ」の準備
第6章 ダラディエの対ソ期待感とソ連の対欧州政策
1 ダラディエ = フィップス会談:強気のダラディエ
2 ソ連のイデオロギー的外交戦略と「アフター・ユー」政策
第7章 赤軍のルーマニア領土通過問題
1 「九月危機」以前のソ連とルーマニア
2 「九月危機」到来の影響
第8章 英首相・側近会議と独軍事作戦会議
1 英艦隊措置の決定
2 新対独警告訓令の発出
3 クントの独政府宛覚書
4 ニュルンベルク軍事作戦会議
第Ⅲ部 ニュルンベルク演説前
第9章 英艦隊措置令とヘンダーソン大使宛訓令のその後
1 独海軍武官と英海軍省局長の会見
2 コルトの報告とヒトラーの暴力観
3 ヘンダーソンの訓令反対論
4 英首相・側近会議の反応
第10章 ボネ対英追随外交
1 アメリカの孤立主義
2 仏空軍の劣悪な現状
3 対致・対英方針の転換点
第11章 ボネ対独宥和外交
1 ボネ「進軍」質問とイギリスの対応
2 ボネ宥和外交のバックボーン
3 ボネ宥和外交の非現実性
第12章 ニュルンベルク演説前の英仏の動向
1 対独追加措置をめぐる攻防
2 チェンバレン首相のプレス声明
3 「プランZ」対「四国国際会議案」
第Ⅳ部 ニュルンベルク演説
第13章 ヒトラー演説とその前後
1 演説直前の欧州各方面の様子
2 演説の大要:ベネシュ批判・自決権要求・示威恫喝
3 演説直後の欧州各方面の反応
第14章 ヒトラー演説後のズデーテン情勢と英仏
1 フランスとイギリスの対応案
2 英首相・側近会議:「プランZ」発動内定
3 午後のズデーテン情勢とボネ = ダラディエ・コンビの動揺
第15章 ダラディエの「三国会議案」対チェンバレンの「プランZ」
1 「第四計画」・「完全自治案」の後退
2 「プランZ」即時発動の決定
3 ズデーテン騒乱の終息と仏致の不協和音
第16章 「プランZ」の閣議承認と対独軍備状況
1 英閣議:「プランZ」と「プレビサイト」・「対致国際保障」問題
2 イギリスの対独軍備状況判断と宥和政策
第Ⅴ部 ベルヒテスガーデン会談
第17章 会談前:チェンバレン訪独ニュースへの各国の反応
1 ヒトラーの応諾から公表へ
2 イギリスの反応
3 独・仏・致の反応
第18章 ヒトラーとチェンバレンの初対決
1 ロンドンからベルヒテスガーデンへ
2 会談の大要(1):親善ムードから激突へ
3 会談の大要(2):破裂の危機から危機回避へ
第19章 会談後:両首脳の満足と前途の難関
1 会談終了後のヒトラーとチェンバレン
2 帰国後のチェンバレン
3 致政府と英「反宥和派」の抵抗度
第20章 英閣議:チェンバレン対クーパー
1 午前の閣議:首相説明に納得せず
2 午後の閣議(1):クーパーの転調
3 午後の閣議(2):硬軟両論の衝突から首相の総括へ
4 ドイツとヒトラーの動向
第Ⅵ部 英仏ロンドン協議
第21章 午前の協議:ダラディエの抵抗
1 民族自決と仏致相互援助条約をめぐる押し問答
2 破綻の危機
第22章 午後の協議:ダラディエの後ずさり
1 昼食会と協議の再開
2 再開協議の焦点:国境線引き問題と対致国際保障問題
3 停会中の動きと深夜の協議
第23章 英仏合同対致強圧とヒトラーの対外工作
1 英仏共同提案の対致手交
2 致の第一次回答と英仏の対致強圧訓令
3 ヒトラーの対斯・対洪・対波工作
第24章 ベネシュの対英仏「無条件降伏」
1 致政府の正式回答
2 ゴーデスベルク会談前の各地の動き
第Ⅶ部 ゴーデスベルク会談
第25章 第一回会談:ヒトラーの法外な新要求
1 プラハの政変
2 ロンドンからゴーデスベルクへ
3 会談の前半:英案拒絶から新要求へ
4 会談の後半:更なる新要求から停会へ
第26章 会談外の動向と会談の幕間
1 ズデーテン情勢と英留守政府の対応
2 この日のチャーチルとこの夜のチェンバレン
3 チェンバレン = ヒトラー往復書簡
4 致の総動員と仏・ソ・英の軍事措置
第27章 第二回会談:決裂の危機から穏やかな物別れ
1 談判破裂の危機へ
2 和やかな閉幕へ
第28章 帰国後のチェンバレンとフランスの国内情勢
1 首相に抵抗する英閣議
2 フランスのジレンマ
第Ⅷ部 ヒトラー = ウィルソン・ベルリン会談
第29章 英仏ロンドン協議からウィルソン特使派遣へ
1 英閣議:深刻な亀裂の拡大
2 チェンバレン = マサリク会見と仏閣議
3 夜の英仏ロンドン協議
4 深夜のイギリス閣議
第30章 第一回会談とシュポルトパラスト演説
1 ガムランの対独「攻勢」計画
2 第一回会談:ヒトラー、期限付最後通告を発す
3 シュポルトパラスト演説:英仏・致分断の狙い
4 英外務省プレス・コミュニケと英首相声明案
5 戦争に備えるパリとロンドン、平和に傾くムッソリーニ
第31章 第二回会談とヒトラーの動揺
1 第二回会談:ウィルソン、対ヒトラー警告を発す
2 ヒトラーのチェンバレン宛返書
3 午後三時の英首相・側近会議:「宥和派」の巻返し
第32章 英独歩み寄りの兆し
1 「プロパガンダ・マーチ」とチェンバレンのラジオ演説
2 避戦への様々な動き
第Ⅸ部 ミュンヘン会談
第33章 ミュンヘン会談開催へ
1 ムッソリーニの仲介奏功
2 ヒトラーの安堵と後悔
3 ミュンヘン四国会議への招待
第34章 ミュンヘン四国首脳会談
1 第一回会談:「ムッソリーニ私案」に沿った進行
2 第二回会談:「ムッソリーニ私案」に沿った合意
3 チェンバレン = ヒトラー共同声明:「ア・ピース・オブ・ペーパー」
第35章 チェンバレン、ダラディエの「平和の凱旋」
1 英仏の歓喜、致の悲哀
2 ダフ・クーパー海相とチェンバレン首相の訣別
第36章 ポスト・ミュンヘン会談期へ
1 英下院の「ミュンヘン」論争
2 国際委員会と対致国際保障の運命
むすびに
事項索引
人名索引