テーマでみる保育実践の中にある保育者の専門性へのアプローチ
研究者+保育実践者とともに「保育者の専門性」を考える1冊
日々の保育実践の中にある「保育者の専門性」を21のテーマから読み解く一冊。「登園」「遊び」「食事」「乳児の泣き」「いざこざ場面」「障害のある子の保育」など、保育実践においてカギとなるテーマや場面について、多様なエピソードを紹介しながら「保育者の専門性」を捉え直すことができる、保育者必携の書。本書では、各章を「研究者による知見の紹介」と「保育実践者によるコメント」の二段構成とし、研究と保育実践の両面から「保育者の専門性」のあり方をみなさんとともに考え、探求します。
[ここがポイント]
◎ 「保育者の専門性」にかかわる大切な視点を、テーマや保育場面ごとに分け、全21章で紹介。
◎ 各テーマを「研究者による知見の紹介」と「実践者によるコメント」の二段構成とし、保育実践のなかにある保育者の専門性を明らかにする。
1 保育者の専門性の大切さと見えにくさ
2 保育の質が子どもに与える影響と保育者の専門性
3 本書の目的と特徴・構成
第Ⅰ部 子どもの生活を支える
第1章 乳児と絆を結ぶ保育者の専門性(水野佳津子)
1 保育者と乳児の絆結びとは
2 特定の相手と結んだ絆を大切にするとき
3 保育者本位から子ども本位への移行
4 安全基地となり、保育者からの自立・成長を見守る
5 離れていてもつながっている関係
コメント 保育の場における乳児と保育者の関係(妹尾正教)
第2章 乳児の〈泣き〉と保育者の専門性(塩崎美穂)
1 赤ちゃんの〈泣き〉に揺れ動く保育者の気持ち——「泣いたらすぐ抱っこ」の日本の保育者
2 子育て文化の比較からみえてくる保育者の専門性
3 母親代わりではない保育者の専門性に向けて
コメント 心をみる(清永歌織)
第3章 登園場面を支える保育実践と保育者の専門性(保木井啓史)
1 保育者にとっての登園場面とは
2 登園場面を支える3種類の「ながら行為」
3 登園場面における「ながら行為」の意義
4 登園場面のより多彩な保育者の専門性へ向けて
コメント 日常の保育において意識せずに行っている「ながら行為」(妹尾有貴)
第4章 食事場面を支える保育実践と保育者の専門性(淀川裕美)
1 食事場面における保育者と子どものやりとりへの注目
2 保育における食事場面の固有性と子どもの経験
3 食事場面における保育者のかかわり
4 食事場面における保育者のかかわりからみえてくる専門性
コメント 「食べる」を支える保育者自身の気持ちと専門性(知念みね子)
第Ⅱ部 子どもの遊びを支える
第5章 乳児の遊びを支える保育実践と保育者の専門性(村上博文)
1 保育実践を支える乳児観の転換
2 保育室の空間構成に着目した実践
3 保育所での実践からみえてきた保育者の専門性
コメント 乳児は主体的に学び発達する(福田泰雅)
第6章 ごっこ遊びを支える保育実践と保育者の専門性(高橋真由美)
1 ごっこ遊びとはどのような遊びか
2 イメージの共有という側面からみるごっこ遊びの変容
3 ごっこ遊びにかかわる保育者の姿
4 ごっこ遊びにかかわる保育者の専門性とは
コメント ニセモノが広げる本物の遊び(中丸元良)
第7章 砂遊びを支える保育実践と保育者の専門性(箕輪潤子)
1 砂場とともに気持ちを受けとめる
2 砂場とともに子どもたちをつなぐ
3 子どもの試行錯誤や気づきを引き出す
4 砂場での遊びにおける保育者の専門性とは
コメント 援助の原点に立ち返らせてくれる砂遊びを支える保育者の専門性(松本信吾)
第8章 子どもの運動遊びを支える保育者の専門性(吉田伊津美)
1 子どもにとっての運動の意義を理解する
2 幼児期の運動指導のポイント
3 家庭との連携
コメント 「やってみたい」意欲を引き出すことから運動経験を重ねていく——運動遊びが苦手な幼児の姿から考える(山崎奈美)
第Ⅲ部 子どもの葛藤場面と向き合う
第9章 いざこざ場面にみる保育者の専門性(白石敏行)
1 子どもと保育者にとってのいざこざ場面
2 いざこざ場面における子どもの4つの体験
3 保育者のいざこざへのかかわり
4 保育実践における行為レベルの専門性
コメント いざこざ場面の発達的変化と保育者の対応のあり方(濱名 浩)
第10章 片付け場面にみる保育者の専門性(平野麻衣子)
1 子どもと保育者のあり方が問われる片付け場面
2 片付け場面における保育者の両義性
3 保育者の援助と葛藤——事例分析より
4 片付け場面における保育者の専門性
コメント 「子どもの生活」を通して育む片付け(池田明子)
第11章 「見守る」ことで子どもの自律的問題解決を支える保育者の専門性(中坪史典)
1 海外が注目する子どもの自律を重視した日本の保育
2 保育者の専門性を読み解く——「ヨモギ団子事件」
3 「ヨモギ団子事件」に埋め込まれた保育者の専門性
4 「傍観」「放任」とは異なる「見守る」「待つ」保育の奥深さ
コメント トラブルから学ぶ体験を保障し、保護者にもその体験が生きる力を育むと伝える大切さ(市原悟子)
第Ⅳ部 子どもの表現世界をひらく
第12章 子どもの絵本との出会いと保育者の専門性(横山真貴子)
1 子どもと絵本の出会いの現在
2 保育における子どもと絵本の出会い
3 絵本との出会いにおける保育者の専門性
コメント 素晴らしい絵とことば、装丁を共有する楽しみ(村崎千津子)
第13章 子どもの音楽的表現を支える保育者の専門性(香曽我部 琢)
1 幼児の音楽的表現をめぐる状況
2 子どもが“歌う”表現を支える保育者の専門性
3 楽器を使った表現を支える保育者の専門性
4 表現を支える保育者の専門性
5 2つのスキルの発達とその基盤となる音の世界
コメント 保育実践における音楽教育のあり方について(出原 大)
第14章 「演じること」「観てもらうこと」を支える保育者の専門性(二宮祐子)
1 保育実践としての劇
2 「観てもらうこと」の意義と困難
3 よりよく「観てもらうこと」をめざして
4 舞台の下に埋め込まれた専門性
コメント 演じる力を支え、親心を引き出すカリキュラム(鈴木惠子)
第Ⅴ部 多様化する保育実践における専門性
第15章 障害のある子を支える保育者の専門性(久保山茂樹)
1 子どもの視点で保育の質を高めるということ
2 子どもたちとわかりあうために
3 保護者と協働するということ
コメント 障害児保育は障害児だけの保育ではない(宮崎勝宣)
第16章 子育て支援における保育者の専門性(小川 晶)
1 子育て支援の視点
2 子育て支援で大切なこと
3 子育て支援の課題
コメント 子どもが本来もっている力を引き出し、保護者とともに喜び合うこと(西垣真由美)
第17章 外国籍の保護者と幼児を支える保育者の専門性(吉田貴子)
1 在留外国人の現状
2 外国人保護者とのコミュニケーション
3 保育実践の中にみる保育者の専門性
4 米国での保育実践から
コメント 多文化の園からみえること(池ヶ谷恵美子)
第18章 よそおいの視点からみる保育者の専門性(木戸彩恵)
1 なぜよそおいについて考えるのか
2 人と人が出会う場における保育者の感情労働
3 保育者の感情労働を支えるよそおい
4 よそおいと対話、そして軋轢
5 保育者としての私をつくるために
コメント 異領域にころがる興味深い視座(正岡里鶴子)
第Ⅵ部 保育者の専門性発達をめぐる問題
第19章 保育者の専門性を支える園内研修・保育カンファレンス(掘越紀香)
1 研修への誘い
2 園内研修と保育カンファレンス
3 保育カンファレンスのさまざまな記録
4 研修とカンファレンスの実際
コメント 保育の場からみる「保育者の専門性を支える園内研修・保育カンファレンス」(中山昌樹)
第20章 保育者の専門性としての保育行為スタイルの形成と維持(上田敏丈)
1 保育行為スタイルとは何だろうか?
2 保育行為スタイルの形成と維持
3 保育者の専門性としての保育行為スタイル
コメント 保育実践者からみた保育行為スタイル(青山 誠)
第21章 保育者の専門性の基盤となるアイデンティティと効力感(西山 修)
1 今の自分と向き合うとき
2 これまでの自分とアイデンティティ
3 これからの自分と効力感
コメント 保育者としてのアイデンティティ形成の支えとなった職員集団(宮武大和)
終 章 その場の状況を見きわめながら子どもとかかわる保育者の見識と洞察(中坪史典)
1 本書によって見いだされた保育者の専門性
2 保育者の専門性を可視化することの大切さ
文 献
おわりに