吉野作造と柳田国男 大正デモクラシーが生んだ「在野の精神」
[ここがポイント]
◎ 「大正デモクラシー」の学問を、吉野作造の研究を中心に再検討し、新たな視点を提示する。
◎ 在野の学問とされてきた柳田国男の学問を、国際的な政治構想、明治維新観から再構築する。
序 章 吉野作造と柳田国男の比較研究
1 吉野と柳田の思想比較
2 研究の対象時期とテーマ・時期区分
第Ⅰ部 「大正デモクラシー」と宗教精神
第一章 吉野作造における「国体」と「神社問題」——キリスト教精神の普遍化と国家神道批判
1 「内面的権威」と「服従」
2 キリスト教と国家との対立・調和
3 「国体」の普遍的基礎としての宗教精神
4 神社問題に対する批判
5 普遍的で合理的な「道徳」による「国体」の改造
第二章 柳田国男における民間「神道」観の成立とキリスト教——「国民倫理」形成と神社合祀政策批判
1 民間「神道」研究への道のり
2 キリスト教と「幽冥教」の狭間で
3 山人の実在と境の神信仰の探求
4 民間「神道」発見におけるキリスト教の役割
第三章 柳田国男における「固有信仰」と「世界民俗学」——キリスト教との関連から
1 「母子神」と聖母マリア
2 「固有信仰」とJ・G・フレイザー——「母子神」信仰を中心に
3 『桃太郎の誕生』とキリスト教
4 日本の「固有信仰」の特徴と「世界民俗学」
5 「固有信仰」とキリスト教
第Ⅱ部 現実の政治認識と学説
第四章 1920年代の柳田と吉野の政治思想——「共同団結の自治」と「政治的自由」
1 「大正デモクラット」の共通点と相違点
2 植民地統治政策および移民政策批判
3 「国民総体の幸福」と「国民の自由」
4 両者における「政治」
第五章 「デモクラシー」と「生存権」——吉野作造と福田徳三との思想的交錯
1 「経済的デモクラシー」をめぐって
2 黎明会以前
3 第一次世界大戦観および「ソーシャル・デモクラシー」をめぐる論争
4 吉野・福田の思想的交錯
5 黎明会解散後
6 「自由」と「自決」のデモクラシー
第六章 「共同団結の自治」実現への模索——「民俗」の価値および神道政策への提言
1 「民俗」と民主国家及び戦争
2 普選と産業組合における「親方制度」の影響
3 口語教育による「民主主義」育成
4 大政翼賛会と柳田民俗学
5 無格社整理問題に対する筧克彦意見と柳田
6 「共同団結の自治」実現のための政策の提唱
第七章 吉野作造の「現代」政治史研究——政治史講義を中心に
1 「明治文化研究」の再検討
2 社会変革思想としての「民本主義」
3 中国革命史研究から日中関係の展望へ
4 明治維新期の民間世論と立憲君主制
5 尾佐竹猛『維新前後に於ける立憲思想の研究』との比較
6 「民本主義」の世界史的展開の構想
第八章 「郷土研究」とアカデミズム史学——「神話」研究の再興及び歴史資料論
1 柳田民俗学とアカデミズムの関係再考
2 久米邦武事件後の記紀神話・民間信仰研究
3 歴史資料論における「郷土研究」とアカデミズム史学
4 中世史開拓における協同と「伝説」の史的価値をめぐる対立
終 章 「大正デモクラシー」の学問の特徴
1 キリスト教・「帝国」日本・歴史
2 「大正デモクラシー」の学問の特徴と現代
補 章 「新しい歴史学」と「我々の文化史学」
1 「文化史」=歴史学界の新潮流
2 『史学雑誌』・『史林』・『史学』彙報欄の「民俗学」
3 「新しい歴史学」と柳田国男
4 実証主義に基づく国民「文化史」の構築
注
主要参考文献
あとがき
事項索引
人名索引