子どもと出会う保育学 思想と実践の融合をめざして
新たな保育学の創造に向けた第一歩
あらゆる保育は〈私〉と〈子ども〉との複雑な関係のなかにあります。
そのことに、これほどこだわって保育を考察した本はないでしょう。
いま、この本に出会えてうれしい。
保育は子どもとの関係によって成り立つ営みである。従来の保育学は、子どもと距離を置いた「客観的」な立場からの研究が主流であり、この「関係性」に主眼を置いた研究は十分にはされてこなかった。そこで本書では、「子どもと出会う」ことを軸に、倉橋惣三・津守眞らの保育思想研究、具体的な事例研究やその方法論などから、保育という営みを捉える新たな保育学のあり方を提示する。
[ここがポイント]
◎ 思想研究と実践研究が融合した新たな保育学
◎ エピソード記述など事例研究の具体的な検討の方法の参考にもなる。
序 章 子どもたちとの出会いのなかで
1 保育のなかの静かな時間
2 転がすということ
3 心が開かれるとき
4 保育園の砂──ある日の去りぎわに
5 保育はみんなでつくるもの
第Ⅰ部 倉橋惣三の保育思想
Introduction 倉橋惣三を読む
第1章 倉橋惣三の保育者論──小説「夏子」から読み解く
1 保育者のアイデンティティ
2 物語を読む意義
3 語りのなかの保育者論──小説「夏子」から
4 倉橋の保育者論の現代的意義
第2章 子どもの心へのアプローチ──倉橋惣三における「保育の心理学」
1 保育のなかで子どもの心に触れること
2 人間的なかかわりの視野
3 保育者自身のかかわりを通した理解
4 保育者自身のあり方を問う姿勢
5 保育実践と結びついた研究の可能性
第Ⅱ部 保育者の省察
Introduction 保育者の専門性を考えるために
第3章 保育者の省察とその過程──津守眞の保育思想
1 保育における「省察」
2 子どもたちとの出会いに立ち返って
3 津守眞における省察の概念
4 省察の過程とその実際──事例から考える
5 省察の過程
6 自らかかわるなかで理解するということ
第4章 保育者として生きるということ──津守房江の保育思想と解釈の方法論
1 保育研究における生活者の視点
2 背景──津守房江がかかわった保育の場
3 津守房江の保育思想──保育を捉える視点
4 解釈の方法論とその前提
5 解釈の実際
6 解釈の主体としての保育者
第Ⅲ部 保育における事例研究の方法論
Introduction 自らかかわって理解するということ
第5章 保育における事例研究のために──保育の関係性を理解する出発点
1 保育における関係性の意義
2 子どもと出会う事例研究に関する先行研究
3 保育における事例研究のための概念整理
第6章 子どもと出会う事例研究の方法論──保育事例の選択・記述・解釈をめぐって
1 事例の意義
2 事例と素材の選択
3 事例記述の方法について
4 事例解釈とその妥当性
第Ⅳ部 保育的関係の展開
Introduction 物語と子ども
第7章 見えないものが心をつなぐ──遊びのなかのイメージと関係の展開
1 遊びの世界で子どもとかかわること
2 保育園を訪れて
3 ある子どもとの出会いから
4 イメージと関係の展開
第8章 絵本を通して子どもとかかわること──相互的な意味の創造
1 絵本を捉える関係性の視点
2 子どもと交わる保育による研究
3 2歳児クラスでのかかわりから
第9章 園庭のコロンブスたち──ランゲフェルドの臨床教育学とお話づくりの体験
1 「コロンブス・テスト」について
2 保育園での実施にあたって
3 「コロンブス」の語りから
4 創造の体験とその共有
第10章 去りぎわが生まれるとき──保育における出会いと別れ
1 去りぎわの体験について
2 子どもたちとの出会いのなかで考える
3 2歳児クラスでの出会いと別れ
おわりに
文献一覧
初出一覧