現代世界の陛下たち デモクラシーと王室・皇室
21世紀の現代、世界の「陛下たち」はどのような存在なのか。本書は、ヨーロッパ・アジア・日本をはじめとする世界の王室・皇室の歴史から現在をみつめ、デモクラシーのもとにある君主制・天皇制のありようを明らかにする。時代の流れに沿い、変容しつつも「伝統」をその象徴の核とする各国王室・皇室の多様な魅力や課題をエピソード豊富に描き出す。「陛下の生前退位」に揺れる日本への示唆にも富む一冊。
[ここがポイント]
◎ 意外と知られていない各国の王室の歴史や政治的位置付けをおさえつつ、エピソード豊富に読み物としてのおもしろさも備えた一冊。
◎ 21世紀のデモクラシーのもと、新たな展開を示す各国の王室・皇室を鮮やかに描き出す。
◎第一線で活躍する豪華な執筆陣。
◎ これからの日本における天皇制を考えるための多彩な視点を提供。
序 章 現代世界の王室(君塚直隆)
1 現代世界の陛下たち
2 20世紀に消えていった王室
3 21世紀の王室の運命
第1章 女王陛下とイギリス王室――地上最後の王様?(君塚直隆)
1 千年の歴史をせおって
2 ジョージ五世の遺訓
3 リリベットの登場と帝国の再編
4 21世紀のイギリス王室
第2章 スペイン政治と王室――安定装置としての君主制(細田晴子)
1 不安定な君主制
2 不安定な共和制・君主制か、安定した独裁制か
3 安定した独裁制と後継者——なぜフランコは君主制を選択したのか?
4 民主化移行——フランコ体制の後継者からデモクラシーの国王へ
5 21世紀のスペイン王室——カリスマ国王から大衆化した王室へ
第3章 オランダにおける王室の展開――時代の流れに沿って(水島治郎)
1 デモクラシーと共存する王制
2 女王の世紀
3 三人の「殿下」たち
4 21世紀に生きる王室
第4章 ベルギー国王とデモクラシーの紆余曲折――君主を戴く共和国(松尾秀哉)
1 国王の「一時的な退位」!?
2 ベルギーとは
3 ベルギー政治と国王の紆余曲折
4 転換点 クビになったレオポルド三世
5 分裂危機の時代の国王
6 最後に――テロの時代の国王
第5章 「国の父」を亡くしたタイ――民衆の敬愛はいかに培われたか(櫻田智恵)
1 「ラーマ九世の時代に生まれた」誇り
2 「国王が政治の上にいる民主主義」?
3 実は演出家? プーミポン国王のメディア戦略
4 王位継承と政治的駆け引き
第6章 デモクラシーと「国体」は両立するか?――戦後日本のデモクラシーと天皇制(原 武史)
1 敗戦と昭和天皇
2 昭和天皇と高松宮の憲法認識
3 昭和天皇の退位問題
4 秩父宮と皇太后節子
5 デモクラシーと「国体」の両立
6 「詔書」と「おことば」
7 天皇は「人間」になり得るか――結びに代えて
第7章 デモクラシーと君主制(宇野重規)
1 生き残った君主制
2 君主制とデモクラシーは矛盾するか――制度論的考察
3 王・貴族・民衆の複雑な関係
4 フランス革命の衝撃
5 王室を飼いならす?――W・バジョットの王室論
6 デモクラシーと君主制は両立するか
おわりに
人名・事項索引
コラム
1 王冠をかけた恋
2 ロイヤル・ウェディングの起源
3 本家はどちら?
4 多才な北欧の君主たち
5 日蘭皇室・王室の絆——マキシマ妃は雅子妃の「ロールモデル」?
6 ロマノフの亡霊?
7 帝国の幻影
8 巨人の国の大きな王様
9 タイの神器
10 五年ごとの国王陛下?
11 両陛下が「意思」を示すとき——戦没者慰霊と被災地見舞い
12 王女プリンセスたちの活躍
13 アラブ世界の王妃の新たなスタイル