日本文学の〈戦後〉と変奏される〈アメリカ〉 占領から文化冷戦の時代へ
[ここがポイント]
◎ 阿川弘之、有吉佐和子、大岡昇平など、著名作家がアメリカでどのような影響を受けたのか横断的に考察する。
◎ ロックフェラー財団文化フェローなど、文化冷戦について多面的に検討を加えている。
1 戦後日本文学と「アメリカ」——ロックフェラー財団創作フェローという視座
2 先行研究の整理と本書の意義
3 本書の内容と構成
第一部 占領期のGHQ文化政策と「アメリカ」の表象
第1章 占領期の文化/文学が創出される場
1 「文化国家」としての再出発——被占領体験の土壌
2 GHQの対日文化政策
3 民間検閲局(CCD)検閲と占領下の言説空間
第2章 占領期表象としての大岡昇平『俘虜記』
1 占領下日本のアレゴリーとしての『俘虜記』
2 占領期の言説空間と『俘虜記』
3 同時代批評の試みとしての『俘虜記』
第3章 阿川弘之の初期作品における原爆の主題と「アメリカ」
1 占領下の原爆文学——被爆と被占領の二重の痕跡
2 阿川の初期作品「年年歳歳」「霊三題」「八月六日」とGHQ検閲
3 『魔の遺産』にみる原爆の表現とアメリカ
第4章 被占領体験の語りにおける「アメリカ」——小島信夫「アメリカン・スクール」を中心に
1 占領の歴史に見る教育とアメリカン・スクール
2 小説「アメリカン・スクール」に描かれた占領
3 占領の記憶の物語化とナショナル・アイデンティティの再定立
第二部 ポスト講和期の日米文化交流と戦後日本の文学場
第5章 ポスト占領期の日米文化関係——文化冷戦の時代
1 占領からポスト占領期へ——対日文化政策の連続と非連続
2 日米文化関係の計画——ジョン・D・ロックフェラー三世の報告書
3 ポスト占領期におけるアメリカの対日文化活動の様相
4 異文化の交流とナショナル・アイデンティティの相関関係
第6章 文化冷戦と文学場——ロックフェラー財団の文学者留学支援プログラムを中心に
1 講和以後の日米人物交流と文学空間
2 ロックフェラー財団創作フェローシップ(Rockefeller Foundation Creative Fellowship)プログラムの実態
3 ロックフェラー財団研究員の意味
第7章 ロックフェラー財団創作フェローのアメリカ留学
1 創作フェローらの留学の概要
2 異文化体験を形作る諸要素——財団の方針と照らし合わせて
3 留学を通して体験された冷戦の磁場
第三部 ロックフェラー財団創作フェローの描いた「アメリカ」
第8章 阿川弘之『カリフォルニヤ』における「アメリカ」——文化冷戦下のエスニシティの表象として
1 冷戦が創出した表象空間
2 原爆投下国アメリカへの留学と日系人への主題転換
3 小説『カリフォルニヤ』における日系人の表象をめぐって
4 小説『カリフォルニヤ』におけるエスニシティ表象の政治性——冷戦下のアメリカ広報宣伝映画との比較を通して
第9章 小島信夫の描いた同時代の「アメリカ」——『異郷の道化師』にみる人種・言語・生活様式
1 小島信夫の留学
2 異なる〈陸地〉の体験と他者意識
3 作品集『異郷の道化師』に描かれる「アメリカ」
第10章 ナショナル・ヒストリーから個の語りへ——有吉佐和子『非色』における〈戦争花嫁〉の「アメリカ」
1 有吉佐和子の留学——その様相と作品への影響
2 留学をめぐるメディア表象——〈才女〉の渡米
3 小説『非色』の描く〈戦争花嫁〉の「アメリカ」
終 章 戦後日本文学と「アメリカ」の変奏
1 ロックフェラー財団創作フェローの「アメリカ」が語るもの
2 創作フェローシップがもたらしたもの——創作フェローの表現の軌跡に即して
3 1959年中間報告書における坂西志保の評価
4 創作フェローのその後
注
参考文献
あとがき
索 引