『ロード・オブ・ザ・リング』は20世紀の戦争を裏返して描いたもの?——文学の世界で現在もっとも元気な読み物である子どもの本や妖精物語を題材に、そこに隠された意味やメッセージを探りあて、読者をより深淵な世界へと導いてくれる英米児童文学研究の好個の入門書。読者の幅を広げ、卒論・レポートの参考にも便利な関係分野の必読書。
まえがき序 英米児童文学の20世紀――作家・語り手・読者(本多英明) 1 古典への新しいまなざし1 不思議の国の絵画――キャロルとシュルレアリスム(庭野延子)2 少年時代の光と影――『トム・ソーヤーの冒険』論(高田賢一)3 インドの紳士の物語 ――『小公女』における英国人男性性の回復(川端有子) 2 広がる視座、問われる真価4 偉大なる詩のなかへ ――『ホビットの冒険』における「憧れ」の探究(成瀬俊一)5 魔法と悪口の物語 ――E・L・カニグズバーグ『魔女ジェニファとわたし』における物語性 (横田順子)6 自己と民族のアイデンティティ ――ヴァージニア・ハミルトンの『わたしはアリラ』を読む(白井澄子) 3 同時代の児童文学に挑む7 嘘つきたちのギャラリー――アン・ファインの挑戦(西村醇子)8 創世記の再構築 ――フィリップ・プルマン『黄金の羅針盤』『神秘の短 剣』『琥珀の望遠鏡』(小峰和子)9 多文化社会と子どもの本 ――アレン・セイの描いた家族の肖像(本多英明) 4 絵本を読み解く10 命をみつめる絵本考 ――絵本とクオリティー・オブ・チャイルドフッド(桂 宥子)11 絵本が解放されるとき ――Little Blue and Little Yellowをてがかりに(高鷲志子)12「育てる者」と「育てられる者」の葛藤 ――『まどのそとのそのまたむこう』に描かれた命の神秘(灰島かり)