先生とはなにか 京都大学師弟物語
あなたには〈先生〉と呼べる人がいますか?
戦後時計台の下で始まった師弟関係を深く、しかし軽やかに問い直す
「先生」とはいったいなんなのか––。
舞台は戦後すぐの京都大学経済学部。先生と学生、そして師匠と弟子が育んだ時間、それは「聖なる時間」であり「恐怖の時間」でもあった。その後ちょっとした行き違いから破門、そして和解。稀代のエッセイストが自伝的回想からつむぎだす京都大学師弟物語。
「先生」、「せんせい」、そして「センセイ」
24発の往復ビンタ
「粗悪品集団」とわいせつ画騒ぎ
生徒のほうが
モンスター・ティーチャーたち
田舎中学に移ってみれば
難波江通正という人
ほんとうの上等人間
「進む者には別れなければならぬ」
第1章 京大経済学部というところ
大野ゼミの面接
ゼミ選び
「放牧派」の大物たち
「実力派」の将師たち
先生とはいくつちがいが
新米助教授という選択
とどのつまりは
第2章 主役の登場
私流ウィキペディア
「大野英二」
知られたくない生い立ち?
ブルジョワは罪か?
愛知一中から八高へ
戦中の京大経済学部
指導教授としての蜷川虎三
敗戦から経済学部「総退陣」まで
総退陣の舞台裏
総退陣余話――師弟関係の危機
杉原四郎の場合
東西師弟関係比べ
第3章 ゼミ始まる
ゼミの面々
テキスト――何といっても『分析』
『分析』とはなにか
ゼミ進む
「神聖な恐怖の時間」
もう一つのゼミ
洛西のプリンス
第4章 師弟関係の変質
――大学院で起こったこと
大学院へ
「やどかり族」
越後和典
外柔内剛
静田均的生き方
静田と大野――わだかまりの正体
孤立と屈辱
「紅い灯」事件
「宇野派」という隙間風
記念碑的処女作――『ドイツ金融資本成立史論』
修士論文顛末
第5章 高商系私学という異文化体験
関学大からの誘い
迷いと選択
ロックフェラーの芝生
これぞ楽園
蛮カラ・ロマンチスト
佐藤明
商学部の人びと
高商的教養とは
一橋の悲願
新米助手の反乱
処女論文と大野
仲人を頼む
思い出したくない思い出
楽園追放
第6章 破 門
友だちの出番
救いの神、尼崎製鐵
甲南大学へ移る
破局へ
十年の破門
かえりみすれば
資性の違い
第7章 自立の効用
普請と地震――揺れる甲南大学経済学部
再生への道
杉原から「盗む」
杉原の「わかりやすさ」
「先生」としての杉原と大野
田中真晴という人
田中と出口勇蔵との確執
「光源氏」の人
第8章 和解・そして晩年
和解の手
「学位をとらないか」
ささやかな気取り
いけにえ
川本和良のばあい
和解のあと
「脇道」への視線
対抗意識
肥前栄一の「逃亡」
大野の「再急進化」
大野の死
墓碑銘――「勝ちに不思議の勝ちあり」
終 章 先生とは何であったか
「余計な部分」
マエストロ型先生
リーダー型先生
メンターとは?
「ピューブル」としての私
あとがき/人名索引