市場経済の多様化と経営学 変わりゆく企業社会の行方
企業行動・構造を国際比較する
現代企業の多様性を理解するための基準を比較経営学の視点から探究
グローバル化と新興市場経済の台頭、金融面を含めた技術革新など、現在、企業も市場・社会も大規模な変動を経験し、企業は多様な姿を見せている。もはや企業を1つの型にはめ込んでとらえられないし、市場・社会は多様性を受け入れざるをえない。何に、そしてどのように変わるのか。本書は、新しい企業社会のルール・価値観を検証し、その国際比較像を大胆に提示している。金融危機の明日を考える上で欠くことのできない材料を提供する。
序 章 多様化する企業社会を比較する(溝端佐登史)
1)多様化する企業社会
2)技術集積・制度からみる企業の多様性
3)労働の現場から企業をみる
4)市民社会と企業
5)比較経営学の視座
第Ⅰ部 市場経済の多様性と企業システム
第1章 企業社会と法(小西 豊)
1)企業不祥事と「市場の質」
2)企業経営者からみた企業不祥事
3)経済犯罪と経済刑法
4)ハードローとソフトローの相互補完性
5)法的制裁の限界を超えて
第2章 多様化する企業社会とコーポレート・ガバナンス(出見世信之)
1)企業社会の変化
2)コーポレート・ガバナンスに対する2つの見方
3)コーポレート・ガバナンス改革
4)コーポレート・ガバナンスの限界
第3章 金融システムの多様性(高田 公)
1)金融システムの多様性:2つの類型
2)資金循環統計からみた金融システムの類型の比較
3)金融システムの類型と機能
4)金融システムの類型の形成と多様性の変化
第4章 資本主義の変容と多様性
――比較政治経済学の成果に即して(堀林 巧)
1)世界の近況と本章の主題・方法
2)先進国資本主義の変容:レギュラシオン学派の見解
3)先進国資本主義経済システムの多様性:VOC学派の見解を中心に
4)欧州資本主義の多様性と動態:ホールの最近の見解
5)ポスト共産主義諸国の資本主義(化)の多様性:近年の研究動向
6)社会による経済の多次元制御:平等で民主主義な世界に向けて
第5章 ポスト社会主義下の資本主義の形成(D.ボーレ/B.グレシュコヴィッチ・著 高田 公・訳)
1)開発の3つの世界は今
2)新しい製造業発展の奇跡
3)特殊な制度配置
4)西欧小国の成功の繰り返しなのか
5)制度イノベーション対模倣
第Ⅱ部 企業システムの国際比較
第6章 日本企業の労働現場
――トヨタと日産の「末端」に焦点をあてて(伊原亮司)
1)「グローバリゼーション」と「日本的経営」の評価の変遷
2)労働者の雇用管理
3)現場の「末端」の労働
4)現場の「末端」の管理の「多様性」
5)「市場主義」下における労働者管理の画一性と多様性
第7章 アメリカの資本市場とM&A(文堂弘之)
1)アメリカの資本市場と資金調達状況
2)M&A活動と株式市場
3)株式所有とM&A
4)M&Aと資本市場のグローバル化
第8章 EUに欧州企業は誕生したのか(田中 宏)
1)欧州企業とは何か
2)欧州統合の中の企業:欧州企業の誕生か
3)企業の欧州化を検討する
4)組織能力・経営諸資源の欧州化
5)進化途上の欧州企業
第9章 北欧とベンチャー企業
――日米比較からみたフィンランド(寺岡 寛)
1)論 点
2)定 義
3)構 造
4)実 態
5)歴 史
6)分 析
7)比 較
8)結 語
第10章 中国国有企業改革と労働者
――改革の結果と労働契約法制定からみえてくる「社会主義市場経済」(横井和彦)
1)「好調」な国有企業
2)国有企業改革の実態
3)国有企業改革と労働者
4)「社会主義市場経済」とは
終 章 企業社会の多様性の行方
――企業の現場の声を通して(小田原 治/溝端佐登史)
1)グローバルに標準化が進む環境金融の世界
2)21世紀企業の行方
索 引