社会学 わが生涯
「社会」、すなわち自らが生きている世界を研究してきた著者にとって、生涯そのものが「学問」であった。本書は、片々極まりない社会の変化を普遍的に捉え、「社会変動の理論」という独自の視点で精緻な研究を積み重ね、国内外に大きな影響を与えてきた第一人者が紡ぎだす、学問との格闘、さまざまな知との交流の記録。
1 ホームページから始める
2 思い出し日記を書き始める
3 アメリカからヨーロッパへ
4 ヨーロッパからアジアへ
5 社会学理論、社会学史、日本社会論
6 登山日記
第Ⅰ部 生い立ちから博士論文まで
第一章 生い立ちの記
1 父母と親族
東京に生まれる 父母と祖父母 世田谷時代 満州へ行く
2 新京一中から都立六中まで
新京一中から広島陸幼へ 都立六中-新宿高校から東大へ
3 父のシベリヤからの帰国
父が「高田保馬を読め」と薦める 高田保馬からの出発
第二章 社会学事始め
1 高田保馬の『社会学概論』から読み始める
高田保馬 青山秀夫と清水幾太郎
2 近代化の理論としての社会学
戸田貞三と鈴木栄太郎 反近代化の社会学
3 タルコット・パーソンズ
パーソンズの行為理論と社会システム理論 私の卒業論文と修士論文
私の病気、母の病気
第三章 二つの博士論文
1 ヴェーバーの社会経済学と高田保馬の経済社会学
経済学と社会学 経済社会学
2 社会学博士論文における経済社会学
社会学博士論文『社会変動の理論』 「社会変動」とは「革命」のことか
社会変動の経済社会学
3 経済学博士論文における経済社会学
経済学博士論文『経済と組織の社会学理論』 社会システム、組織、社会的交換
第Ⅱ部 アメリカ、ヨーロッパ、アジア
第四章 これがアメリカだ
1 一九六六年のアメリカ
「道具的活動主義」の国 一九六六年にアメリカで起こっていたこと
2 ベトナム反戦運動
反戦の声 優雅な労働組合 変わる経営者の信条 新しい社会の主役
3 多様なアメリカの社会
コミュニティの人びと 黒い過激派 不完全な公民権法
ニューレフトの学生運動 アメリカン・デモクラシー
『これがアメリカだ』の結論
第五章 SSM調査とアメリカ留学
1 SSM調査研究
社会階層と社会移動 日本のSSM調査 日本におけるSSM調査のスタート
2 第一回と第二回のSSM調査
一九五五年の第一回SSM調査 一九六五年の第二回SSM調査
3 第三回SSM調査
一九七五年の第三回SSM調査 慶応-イリノイ・プロジェクト
SSM研究における一九七五年調査の位置
イリノイ大学とハーヴァード大学 アメリカにおける家族旅行
第六章 オーストラリアからヨーロッパへ
1 オーストラリア国立大学への留学
オーストラリア国立大学 オーストラリア体験
2 オーストラリアからオーストリアへ
インスブルックとザルツブルクからの講演依頼
インスブルックでの国際シンポジウム
ザルツブルクにおけるオーストリア政府主宰のセミナー
リンツの社会学者フュルステンベルクさん
3 生まれて初めての共産主義圏
ブラティスラヴァへ チェコスロヴァキアの社会学者マホニンさん
第七章 憧れのドイツ―ボッフム大学とテュービンゲン大学
1 東大とボッフム大学との交換プロジェクト
ボッフム大学 ボッフムからマンハイムへ ボッフムへ戻る
ニクラス・ルーマン教授を訪ねる
2 ヨーロッパへ家族旅行
フランスへ シュヴァルツヴァルト、グリンデルヴァルト、ザルツカンマーグート
3 ボッフム大学とテュービンゲン大学でのドイツ語講義
ボッフム大学の冬学期講義を単身生活ですごす 『日本の近代化と社会変動』
第八章 中国語ができない私の中国経験―南開大学
1 『経済社会学』を講義する
天津の南開大学 南開大学と『経済社会学』 経済社会学の講義
経済的行為と社会的行為 市場原理と組織原理 市場経済と計画経済
二ヵ月の講義を終えて
2 『近代化の理論』を講義する
一九八七年の講義 五四運動七〇周年デモ 泰山と曲阜への旅行
学生のハンストとそれをめぐる李鵬と趙紫陽
3 瀋陽と長春
瀋陽と長春への講演旅行 天安門事件とその後の日中関係
第九章 私の韓国経験
1 韓国人大学院生の来日
中国経験から韓国経験へ 韓国人大学院生の博士論文指導
2 私の韓国での講演(パート1)
前近代の東アジア諸国 経済的・政治的近代化へのスタート
朝鮮の『近代化』への努力の失敗 朝鮮をめぐる中国、ロシア、日本
日本の植民地支配
3 私の韓国での講演(パート2)
戦後における日本と南北朝鮮の平和の条件 幸福な日韓関係の実現のために
第Ⅲ部 理論社会学、西洋社会学史、日本社会論
第十章 私の「理論社会学」の形成
1 『社会学原理』
出発点としての産業社会論と社会変動論 高田保馬からパーソンズへ
『社会学原理』の講義プラン
2 社会のミクロ分析とマクロ分析
社会のミクロ分析 社会のマクロ分析
3 近代産業社会の社会システム
第十一章 日本の近代化と西洋社会学史
1 日本の近代化と第一世代の社会学―福澤諭吉、サン-シモン、コント、スペンサー
近代化思想における西洋と東洋 福澤諭吉と日本の西洋的近代化
サン-シモンの産業主義 コントの実証主義 スペンサーの自由主義
2 第二世代の社会学―デュルケーム、ジンメル、ヴェーバー
デュルケームの機能主義 デュルケームにおける分業の機能
社会学史におけるデュルケームのキイ・ポジション ジンメルの相互行為主義
ジンメルにおける相互行為の近代化 ジンメルの『貨幣の哲学』および『社会学』
ヴェーバーの「ロッシャーとクニース」論文と「客観性」論文
ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
ヴェーバーの『経済と社会』
3 第三世代の社会学―パーソンズ、シュッツ、ルーマン
二〇世紀社会最大の思想家タルコット・パーソンズ
パーソンズの社会システム理論 パーソンズとスメルサーの『経済と社会』
パーソンズの近代化理論 近代社会の前近代的基礎
現代社会科学における実証主義と理念主義
現象学的社会学で世界を動かしたシュッツ
社会システム理論を革新した二〇世紀最後の理論家ルーマン
第十二章 「中流意識」の崩壊と「格差社会」の到来
1 崩壊する「中流社会」
「中流」意識の急増から急減へ 「福祉元年」から「福祉見直し」政策へ
新保守主義の到来 「総合社会政策」プロジェクト
2 社会計画の理論的基礎
社会政策と社会計画 経済計画と社会計画 社会計画と社会視標
3 「格差社会」になった日本
派遣労働者、フリーター、ニート 格差社会の到来
附章 思い出し登山日記
1 登山を始める
私の登山経験 初めての八ヶ岳と穂高岳 三月の八ヶ岳
五月の白馬杓子尾根 剣岳登山
2 城戸さんの永久の別れとその後
三月の塩見岳 城戸さんパーティ荒川岳から帰らず 槍ヶ岳から「裏銀座」コース
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳) 南アルプス横断登山(塩見から赤石へ)
3 七四歳の富士登山
富士登山を思い立つ 富士登山を決行する
主要著作一覧
あとがき
富永健一略年譜
人名・事項索引