文化交流のエリアスタディーズ 日本につながる文化の道
グローバル化が進行する現代世界の中で、「地域文化」と呼ばれるものの意義を再考する。日本へつながる「文化の道(カルチュラルルート)」を共有しながら、アジア・ユーラシアから太平洋に広がる世界の諸地域はどのような文化を形成し、交流してきたのか。本書は、日本を軸とした複合的文化ネットワークを考察する試みである。
序 章 「アジア地域文化」を考える (濱下武志)
1 文化のつながり
2 「文化」の重なり
3 東アジア地政文化は今に続いているか
4 ネットワーク論で考える地域文化のつながり
5 「混一彊理歴代国都之図」――文化の空間表現
6 地域文化を考える
第Ⅰ部 アジア・太平洋の交流
第1章 移動する文化とグローバル世界――華僑華人の文化ネットワーク (濱下武志)
1 世界を結ぶ6人の隔たり
2 文化の移動とネットワーク文化
3 ネットワーク化する世界――グローバリゼーション
4 移民ネットワークと移動する文化
5 華僑華人ネットワークの中の「業縁」と「血縁」
6 中国の経済発展と華僑華人ネットワークの変化
7 多様な華人の移民経路と文縁――文化ネットワーク
8 文化ネットワークによる多様な結びつき
9 「華人世界」と社会・文化的ネットワーク
10 ネットワーク論とアジア社会
11 華人ネットワークについての課題と日本
第2章 固有の文化をさぐる旅――アジアの稲作文化を訪ねて (須藤 護)
1 人文景観に見る「相異」と「共通」
2 多様な稲作文化の展開
3 日本におけるコメ文化の変容
4 文化の受け皿と固有の文化
第3章 集落形態から見る東アジア初期国家の形成過程 (徐 光輝)
1 環濠系集落と初期国家の形成
2 黄河流域における先史時代城郭都市の原型
3 西遼河流域の集落形態
4 稲作の伝来をめぐって
第4章 ニュージーランドと日本の知られざる結びつき (チャプル・ジュリアン)
1 最初のコンタクト
2 第二次世界大戦――敵対関係のニュージーランドと日本
3 戦後の関係発展
4 知られざる共通点
第5章 日本の「エレキブーム」と「グループサウンズ」―1961~1966年 (マイケル・ヒューマノフスキー)
1 アメリカの影響を受けた日本の音楽産業
2 日本のポピュラー音楽
3 日本のエレキブーム
4 日本のグループサウンズとその限界
第6章 京都とアジア――いにしえからの交流をひもとく (泉 文明)
1 千年の都 京都の魅力
2 平安京の造営と唐都風水の影響
3 京都に遺した朝鮮通信使の足跡
4 交流・創造を重ね続ける京都
第Ⅱ部 ユーラシアの交流
第7章 江戸から明治・大正期の日露の交流 (松原広志)
1 日露の遭遇
2 世界の中の日本とロシア――2つの「謎の国」
3 ロシアにおける漂民=日本語教師たち
4 ロシアにおける日本イメージ
5 ロシア遣日三使節と日本人漂民たち
6 文明開化期の日本とロシア文化
7 今後の日露交流
第8章 「東ヨーロッパ」の概念と日本の投資(キグリチュ・イシュトヴァーン)
1 冷戦終結と日本
2 EU新加盟の背景
3 ヨーロッパの概念――歴史的・文化的・学術的な見方の展開
4 中部ヨーロッパ(中欧)
5 中欧の価値観と現在の経済状況
6 中欧諸国の経済事情と日本の経済活動
7 ヨーロッパの諸地域と日本
第9章 西アジア・中央アジアと日本の交流―飛鳥時代から現代まで (佐野東生/アイスン・ウヤル)
1 古代ペルシアと飛鳥の交流
2 近現代のイラン・中央アジアとの交流
3 近現代のトルコとの交流
第10章 南アジア・中央アジアからの仏教の伝播と交流 (三谷真澄)
1 インドと日本
2 中央アジアと仏教
3 中央アジアと大谷探検隊
4 日本と仏教文化
索 引