衆参ねじれ選挙の政治学 政権交代下の2010年参院選
民主党政権下で初めて行われた2010年7月の参院選は、いかなる選挙だったのか。鳩山政権が基地問題や政治資金問題で迷走を続ける中で、民主党がいだいた展望はどのように挫折し、また自民党などの野党はいかにして巻き返そうとしたのか。政権交代の意味、参議院の存在理由をも問いかけた参院選について、本書では全国各地の特徴的選挙区を調査することで、その実態を明らかにする。
序 章 「政権交代」選挙から「衆参ねじれ」選挙へ(白鳥 浩)
1 政権交代下の日本政治――鳩山由紀夫首相と菅直人首相
2 政権交代と政策――新政権の「政治主導」によるマニフェストの実現
3 鳩山政権下での「地域主権」の実現への試み
4 鳩山首相の誤算
5 菅内閣の誕生――選挙管理のための緊急避難内閣
6 消費税発言のインパクトと「不可避な選挙」としての参院選
7 2010年参院選――政権交代の成否を占う初の全国的な国政選挙
第Ⅰ部 組織の変容
第1章 新党の挑戦(白鳥 浩)
――東京都選挙区、静岡県選挙区
1 参院選の位相
2 新党の形成――「政権交代」の激動と「政権与党民主党」への反動
3 政党の形成の理論的側面
4 政権与党の選挙戦略――複数区における複数の民主党公認候補と新党候補者
5 分析の枠組み――選挙制度、政党システム、有効政党数、派閥
6 新党の挑戦――東京都選挙区と静岡県選挙区
7 新党はどれほど各選挙区の既存の政党システムにくいこめたか
8 新党の挑戦と2010年参院選
第2章 政権交代と選挙過程における政党地方組織(堤 英敬/森 道哉)
――香川県選挙区
1 選挙を取り巻く環境変容と一人区における自民党大勝
2 自民党――県連による党営選挙
3 民主党・社民党・連合の「三頭体制」による選挙戦
4 政権交代と業界団体・有権者の反応
5 2010年参院選における政党地方組織
第3章 政党のリクルートメント機能不全(浅野一弘)
――北海道選挙区
1 番狂わせのなかった北海道選挙区
2 候補者選定のプロセス
3 選挙分析
4 リクルートメントの視点から見た民主党北海道
第4章 江田ブランドと溶解した自民党組織(山口希望)
――岡山県選挙区
1 「順当」だった江田五月の勝利
2 江田五月と岡山県における選挙の変遷
3 2010年参院選
4 選挙結果から
第Ⅱ部 地盤の変容
第5章 二つの終焉(秋吉貴雄)
――熊本県選挙区
1 問題の所在
2 熊本選挙区の構造
3 民主党のつまずき
4 自民党組織の衰退
5 選挙戦の展開
6 敗北の要因と含意
第6章 二人区は「攻め」の選挙区か、「守り」の選挙区か(松田憲忠)
――福岡県選挙区
1 福岡県選挙区における継続と変化
2 自民党――保守分裂の中での戦略
3 民主党――「二人区」戦略のねらいと現実
4 選挙制度、選挙戦略、選挙結果
第7章 系列再編の視点から見る政権交代(河村和徳/竹田香織)
――宮城県選挙区
1 総選挙における民主党勝利の理由
2 自民党の系列とその再編
3 系列再編の先の時代へ――宮城県選挙区に政権交代がもたらした影響
第8章 全国唯一の民主党候補空白選挙区(照屋寛之)
――沖縄県選挙区
1 民主党の衰退現象
2 鳩山発言と参院選への影響
3 民主党候補者擁立断念
4 選挙協力
5 選挙結果
おわりに――「期待の民意」と「失望の民意」のはざま
資料1 2010年参議院議員通常選挙結果(選挙区)
資料2 2010年参議院議員通常選挙結果(比例区)
人名索引