映画の身体論
映画は如何に「身体」を描いてきたのだろうか。スクリーンが隠蔽/開示(イン・アウト)する身体とは、文化的・社会的に構築される差異としての「身体」に他ならない。性やジェンダーに接続する身体として、或いは国家や政治的メタファーを逆照射する表象/身体として、「身体」が包摂する領域は限りない。明滅するスクリーンの向こう側から呼びかける俳優の身体、そしてそこに同一化する観客の身体も忘れてはならないだろう。映画と身体との関係は複層的であり、その関係性は、網状のテクスト/コンテクストの中でキメラの如く変化する。本書では、映画と身体をめぐる表象/言説を8つの角度から分析・考察する。映画の身体論—このアプローチは複数の可能性へと開かれるだろう。
はしがき
第1章 運動家ゴダール
――スポーツ、身体、メディア
堀潤之(関西大学准教授)
第2章 《ポストコロニアル》ブルース・リー
――カンフー映画における肉体・マスキュリニティ表象をめぐって
山本秀行(神戸大学准教授)
第3章 カウボーイと石鹸の香り
――ハリウッド映画における男性の入浴シーンについて
川本徹(京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程在籍)
第4章 プラックスプロイテーション映画のアクション・ヒロイン
――パム・グリアとタマラ・ドブソンの身体をめぐって
名嘉山リサ( 沖縄工業高等専門学校講師)
第5章 白い身体、黒い肉体
――『青い山脈』と『キクとイサム』における占領のイメージ
吉村いづみ(名古屋文化短期大学教授)
第6章 命短し芸は長し
――市川雷蔵 銀幕に生き続ける身体
小川順子(中部大学准教授)
第7章 アメリカ戦中ミュージカルの系譜
――進軍とアメリカーナ
松田英男(京都大学教授)
第8章 メイル・ボディの誘惑
――ニューシネマ、身体、ポルノグラフィ
塚田幸光(関西学院大学教授)
映画用語集
映画タイトル索引
人名索引
監修者・執筆者紹介