コモンズからの都市再生 地域共同管理と法の新たな役割
山野海川の資源分析を中心に発展したコモンズ理論の分析枠組を都市の小公園、集合住宅、景観、観光資源といった都市のコモンズ財、地方公共財に応用。実態調査に基づき、都市でのよりよいコモンズづくりやその維持管理のあり方についての制度設計を提示する。内外の研究蓄積や政策科学のアプローチも踏まえた、法社会学と実践を結ぶ画期的一書となる。
第1章 コモンズからの都市へのアプローチ
1 本書の狙い
2 コモンズとは何か
3 ハーディン・モデルの影響
4 コモンズ論の興隆
5 コモンズ概念の用法
6 オストロムのSOCC理論
7 都市におけるSOCC理論の応用可能性
8 都市再生における法の役割
第2章 コモンズ研究のための法概念論
1 入会林野の法社会学への再訪
2 権利義務関係の法
3 組織内の法
4 政策的法
5 分析フレームの定位
第3章 コモンズとしての児童公園の可能性
1 児童公園をめぐる今日的課題
2 児童公園の法的側面
3 調査の方法
4 コミュニティの共同空間としての児童公園
5 維持管理活動の実態と課題
6 維持管理状態を良好にする要因と制度スケッチ
7 法の新たな役割
第4章 身近な公園のプライヴァティゼーション
——米英仏と日本の民設公園制度の比較
1 進展するプライヴァティゼーションと本章の視角
2 アメリカのゲーテッドコミュニティの法的仕組みと社会的つながり
3 イギリス・ロンドンにおけるガーデンスクエアのオープンスペース化
4 日本の首都圏におけるマンションづくりと里山・緑地保全との共生
5 フランスにおける都市再生とコモンズづくり
6 プライヴァティゼーションの弊害是正のための法の役割
第5章 まちなか居住とマンション・コミュニティ
——コミュニティ運営の成立条件
1 コモンズとしてのマンション
2 マンション法の構造とコミュニティの位置づけ
3 まちなか居住政策におけるマンションの再評価
4 共用施設とマンション・コミュニティ
5 調査の方法
6 滋賀県草津市におけるマンション政策と各マンションの特徴
7 まちなか居住の実態
8 マンションと周辺の地域コミュニティとの関係
9 共用施設とコミュニティ形成
10 管理組合活動の担い手の供給基盤
11 中古市場におけるマンション管理の評価
12 マンション・コモンズを育むために
第6章 景観規制の執行・受容過程とコモンズ論
——京都市における屋外広告物規制条例を事例として
1 コモンズとしての景観の特徴
2 規制執行過程の法社会学研究
3 京都市・屋外広告物新条例の内容
4 調査の視点と方法
5 規制者の執行戦略とその効果
6 中間団体による自主規制と協調行動
7 ローカル・ルール運用のための法の援用
8 コモンズの維持・発展のための法執行戦略
第7章 コモンズを活かすために
——研究の総括と法理論への展望
1 所有権論としてのコモンズ論
2 コモンズの悲劇を乗り越えるために
3 法の新たな役割
4 法理論への展望
参考文献一覧
あとがき
索 引