西田幾多郎 本当の日本はこれからと存じます
西田幾多郎(1870~1945)哲学者。
明治期の青年の意気に燃えつつも、落伍者の悲哀をなめ続けた人生の前段。京都帝国大学の哲学講座で思索に沈潜した大正期の、人生の中段。学問的名声に包まれ、しかし家庭では悲惨に見舞われ続けた昭和期の、人生の後段、再婚で癒されつつも、太平洋戦争の空襲下に絶命した晩年。本書はこの西田の人生と時代の全貌を描き切る。
[副題の由来]「これに反し高い立場を何処までも失うことさえなければ、一時は万一国家不運の時あるも必ず再起、大いに発展の時が来ると思います、〔…〕本当の日本はこれからと存じます」。連日の空襲下の昭和20年4月8日、そして自らの死の二カ月前に、西田はなお不屈の思索を維持していた(本書288頁参照)。
序 章 「われ死なば…」
第1章 黒板を前にして(1870—1910)
第1節 人生軌跡「小生には尚一片の脊梁骨あり」
第2節 思想と時代 明治の勃興と「純粋経験」の思索
第2章 黒板を後〈うしろ〉にして(1910—1928)
第1節 人生軌跡「我は今深き己の奥底にあり」
第2節 思想と時代 大正の憂鬱と「場所」の開け
第3章 黒板を去って(上)(1928—1936)
第1節 人生軌跡「交通巡査ピリゝオヂーチャンスルノデナイ」
第2節 思想と時代 昭和の暗雲と「弁証法的一般者」の思想
第4章 黒板を去って(下)(1936—1945)
第1節 人生軌跡「ぶつかるまで何処までも」
第2節 思想と時代 昭和の破局と「矛盾的自己同一」の弁証法
終 章 「本当の日本はこれからと存じます」(1945—)
付 論 欧米言語圏での西田哲学研究
あとがき
西田幾多郎略年譜
人名・著作・事項索引