発達科学の最前線
近年、発達科学はその方法の進展や他分野との融合により大きく様変わりしており、それは発達の概念をも変えるほどの勢いである。本書ではそのホットな領域で活躍する研究者たちが、新しい手法を用いて得られた最新の知見を紹介。他者理解や自己制御、母子関係など、実に多面的な視点から“乳幼児の発達”のありように迫る。
[ここがポイント]
・国内外で活躍する若手研究者が明かす、乳幼児研究の最新の知見を紹介。
・発達科学の面白さを堪能しながら、他者理解から自己制御に至るまで、実に多面的な視点から‶乳幼児の発達〟のありように迫る書。
序 章 発達科学の現在 (板倉昭二)
1 発達科学が扱うヒトの発達
2 発達科学の新しい融合または共生
3 発達科学と学際領域との連携
4 発達科学の新しい方法
5 本書の構成
第1章 発達と進化からみる物の世界(村井千寿子)
1 物の世界を知るということ
2 物体知識と認知の領域固有性
3 物理的知識に関する発達的・進化的研究
第2章 乳児期における他者理解 (鹿子木康弘)
——知覚と行為の関係性から
1 他者理解とそのメカニズム
2 ダイレクトマッチング過程の個体発生
3 ミラーニューロンシステムの発達
4 他者への共感・同情的理解
5 他者理解の発現メカニズム——今後の方向性
第3章 乳幼児における社会的学習 (奥村優子)
1 乳幼児における知識獲得
2 乳幼児期における社会的学習
3 乳児期のコミュニケーションに基づく学習メカニズム
4 乳幼児は誰から学ぶのか
5 新しい学習科学への展望
第4章 質問のやりとりというコミュニケーション(大神田麻子)
1 言語的コミュニケーションの発達
2 肯定バイアスとは
3 なぜ「うん」と答えるのか
4 なぜ文化差が生じるのか
5 コミュニケーション研究の未来
第5章 乳幼児期の自己制御と実行機能(森口佑介)
1 実行機能
2 実行機能の発達の脳内基盤
3 社会的世界における実行機能の発達
4 ふり遊びと実行機能の発達
5 実行機能の訓練
6 実行機能研究の今後に向けて
第6章 成人による乳児の身体と心への注目(篠原郁子)
——乳幼児との相互作用を支えるものとは
1 魅惑する幼児
2 乳児と大人の相互作用
3 乳児の顔を見ることは、心を見ることか
4 「乳児と大人の組み合わせ」へのこだわり——結びにかえて
第7章 子どもの社会性の発達と障害(浅田晃佑)
——自閉症スペクトラム障害とウィリアムス症候群
1 自閉症スペクトラム障害とは
2 自閉症スペクトラム障害の初期徴候
3 自閉症スペクトラム障害のコミュニケーション能力とその発達
4 自閉症スペクトラム障害の社会的知覚と社会的認知
5 正反対の症候群? ウィリアムス症候群
6 社会性の障害の発生過程
第8章 発達科学はいつから発達科学なのか(中尾 央)
——発達科学のこれまでとこれから
1 発達心理学から発達科学へ?
2 発達心理学の主要ジャーナルからみる学際的発達研究の歴史
3 学際領域としての発達心理学
4 細分化と総合化——「発達科学」の意義
5 「発達科学」のメタ科学のこれから——結語
おわりに
索 引