ジェントリフィケーションと報復都市 新たなる都市のフロンティア
ジェントリフィケーションは「都市開発」や「都市再生」の先端的取り組みとして近年認知が広がってきた。しかしこれまで正面から取り扱った研究は少ない。
そんななかでもジェントリフィケーション研究の古典として評価の高い本書は、都市への投資とその引揚げがもたらす機制を理論的に解き明かすと同時に世界各地での事例も取り上げた、21世紀の「都市開発」の光と闇に迫る一書である。
また、ジェントリフィケーションの過程においてインナーシティに住まう人々は、都市を「盗み取った」のだとして非難され、その土地は奪い返されなければならないとされる。このような報復と敵意の感情こそが、現代のジェントリフィケーションを正当化する要素として、分かちがたく組み込まれつつあるのだ。スミスはこれを、「報復都市」と呼ぶ。(原著 Neil Smith, 1996, The New Urban Frontier: Gentrification and the Revanchist City, Routledge. )
[ここがポイント]
〇都市再開発/ジェントリフィケーション研究の古典とされる重要書
〇ニール・スミスの代表作
イントロダクション
第1章 「アベニューBの階級闘争」
――ワイルド・ワイルド・ウエストとしてのロワー・イーストサイド
1 フロンティアという神話の構築
2 ロイサイダを売り払う
3 利潤のための開拓
4 「第一波よりもいっそう熾烈なもうひとつの波」
――新たなる(グローバルな)インディアン戦争?
第2章 ジェントリフィケーションはダーティ・ワードか?
1 ジェントリフィケーション小史
2 ジェントリフィケーションをめぐる論争
――ジェントリフィケーションの理論か、理論のジェントリフィケーションか?
3 報復都市
第Ⅰ部 ジェントリフィケーションの理論に向けて
第3章 ローカルな議論――「消費者主権」から地代格差へ
1 消費者主権の限界
2 郊外からの回帰?
3 建造環境への投資
4 インナーシティにおける資本の価値摩損
5 ジェントリフィケーション――地代格差
6 結論――資本による都市への回帰運動
7 後記
第4章 グローバルな議論――不均等発展
1 都市スケールでの不均等発展
2 建造環境への資本の価値実現と価値摩損
3 結論
第5章 社会的な議論――ヤッピーと住宅をめぐって
1 ニュー・ミドルクラス?
2 女性とジェントリフィケーション
3 ジェントリフィケーションは錯乱した概念か?
4 ジェントリフィケーション・階級・ジェンダー
――いくつかの暫定的な結論
5 ジェントリフィケーション・キッチュと消費景観としての都市?
第Ⅱ部 グローバルなことはローカルなこと
第6章 市場・国家・イデオロギー――ソサエティヒル
1 レシピとレトリック
2 国家のコントロール
3 ソサエティヒルのデベロッパー
4 ソサエティヒルをファイナンスする
5 階級・コンテクスト・歴史
第7章 キャッチ=22
――ハーレムのジェントリフィケーション?
1 ハーレムのジェントリフィケーションの起源を地図化する
2 推進力・ダイナミクス・制約
3 階級・人種・空間
4 キャッチ=22
5 「騎馬隊で包囲する」
第8章 普遍と例外をめぐって――ヨーロッパの三都市
1 アムステルダム――スクウォッターと国家
2 ブダペスト――ジェントリフィケーションと新たなる資本主義
3 パリ――遅れてやってきた分散的ジェントリフィケーション
4 結論
第Ⅲ部 報復都市
第9章 ジェントリフィケーションのフロンティアを地図化する
1 資本の引揚げがもたらす利益
2 滞納がもたらす思わぬ知見――税金未納とその転換点
3 ロワー・イーストサイド
4 ジェントリフィケーションを地図化する
5 結論
第10章 ジェントリフィケーションから報復都市へ
1 報復都市
2 トンプキンズ・スクエア・パーク以降
――ニューヨークのホームレス戦争
3 脱ジェントリフィケーション?
4 都市のフロンティアを取り戻す
訳者解説/文献/索引