教養のフランス近現代史
本書は,17~21世紀フランスの政治社会の歴史のみならず,文化史にも目を配った初学者向けテキスト。図版や写真を豊富に掲載し,学ぶべきポイントを整理。教養としてのフランス近現代史を通して,学ぶよろこびを伝える1冊。
[ここがポイント]
◎ 文化史,社会史にも目を配り大学の入門 テキストとして最適
◎ 図版満載で歴史の理解を助ける
序 章 フランス近現代史に何を見るか(竹中幸史)
――多様にして連接的な共和国
1 教養のススメ
2 『モンテ・クリスト伯』
3 本書の範囲と構成
4 政治社会と文化
5 フランスらしい文化とは?
第1章 ヴェルサイユの光と影(竹中幸史)
1 先王たちの遺産――ルイ14世を生み出したもの
2 特権の体系
3 ルイ14世の治世――特権の再編
4 ヴェルサイユの輝き
5 「偉大なる世紀」のひずみ
6 革命の序曲――ブルジョワジーの成長と「世論」
7 17世紀の危機,18世紀における拡大と収縮――人口と経済
第2章 フランス革命の衝撃(竹中幸史)
1 貴族の革命,地方の熱気
2 1789年の衝撃――中央と地方の共振
3 「一にして不可分の共和国」の盛衰
4 「世論」の独裁とナショナリズムの興隆
5 習俗の革命
6 フランス的工業化モデル
7 革命の長期的影響
第3章 ナポレオンとその時代(杉本淑彦)
1 クーデタへの道
2 イギリスとの覇権争い
3 正負の遺産
第4章 ガストロノミー(美食)の誕生(八木尚子)
1 美食文化前史
2 レストランの誕生
3 媒介者としてのガストロノーム
4 ガストロノミーの確立に向けて
5 『味覚の生理学』誕生の要因
6 共有される美食の価値観
第5章 「モードの国」フランス(角田奈歩)
1 絹とレースの国
2 綿織物とフランス
3 モード都市パリの成立
4 世界の中のパリ・モード
第6章 よみがえった王政(中山 俊)
1 王政への回帰――後退か進歩か
2 フランス革命の遺産
3 「一にして可分」な文化的統合
4 威信の回復にむけて
第7章 民主と元首の相剋(長井伸仁)
1 「1848年」と「1870年」のはざまで
2 二月革命と第二共和政の成立
3 ルイ=ナポレオン・ボナパルト
4 ボナパルティスム
5 繁栄の光と影
6 帝政の栄光と悲惨
第8章 絵 画(福田美雪)
1 絵画を飾るふたつのサロン――「官展(Salon)」と「客間(salon)」
2 絵画における「ピトレスク」――イタリア風景の発見
3 ロマン派によるオリエントの夢想
4 「伝統」対「現代性」――クールベとマネの登場
5 光と色彩のたわむれ――印象派の革命
6 ベル・エポックから「狂乱の時代」まで――絵画表現の新たな展開
第9章 近代都市パリのまちなみ(北河大次郎)
1 世界の中のパリ
2 19世紀の整備の進展
3 パリの近代化に対する批判
4 第二次世界大戦後のパリ
第10章 「ベル・エポック」から第一次世界大戦へ(岡部造史)
1 第三共和政の成立
2 共和政の国民統合
3 共和政の危機と変容――穏健共和政から急進共和政へ
4 世紀転換期の社会
5 対外関係と戦争への道
第11章 両大戦間期の社会(剣持久木)
1 大戦の奈落からの再生
2 相対的安定と平和主義
3 新たな危機の時代
4 反ファシズム人民戦線政府へ
5 フランスファシズム
第12章 多彩な文学世界(津森圭一)
1 近代フランス文学の夜明け――ロマン主義とともに
2 19世紀の中盤の文学――ロマン主義から写実主義へ
3 19世紀末の文学――象徴主義にむかって
4 20世紀初頭の文学――「ベル・エポック」を謳歌した作家たち
5 両大戦間期それ以降のフランス文学
第13章 移民と外国人(工藤晶人)
1 移民の大陸
2 近世のフランスとフランス人
3 18世紀後半の断絶
4 国籍法の近代
5 寄せては返す波
第14章 第二次世界大戦下のフランス(剣持久木)
1 奇妙な平和から奇妙な戦争へ
2 ヴィシー体制の対独協力
3 国民革命――モーラス主義から反ユダヤ政策へ
4 レジスタンスの展開
5 占領期のフランス
第15章 「現代思想」の系譜(坂本尚志)
1 「現代思想」ブームと20世紀フランス思想
2 サルトルの「主体の哲学」
3 「概念の哲学」の系譜――エピステモロジー
4 主体と構造――レヴィ=ストロースによるサルトル批判
5 主体は概念に屈したのか?――主体の問題の再構成
6 闘争する概念,共闘する主体
第16章 復興から新時代へ(杉本淑彦)
1 パクス=アメリカーナの中へ
2 国内経済改革と福祉国家化
3 植民地帝国の再建を目指して
4 西ヨーロッパの統合を目指して
第17章 知られざる工業大国(北河大次郎)
1 フランス産業の今
2 産業近代化の礎――体制と担い手
3 近代産業のヴィジョンとイノベーション
4 第二次世界大戦後の新たな展開
第18章 ドゴールの時代(渡辺和行)
1 ゴーリズム
2 アルジェリア危機とドゴールの再登場
3 アルジェリアの独立
4 ドゴール外交
5 繁栄の光と影
第19章 文化遺産とツーリズム(中山 俊)
1 文化遺産の保護制度
2 文化遺産の略奪と返還
3 旅行のなかの文化遺産
4 ツーリズムの発展――民主化への道
第20章 ヨーロッパ統合とフランス(上原良子)
1 二つの戦後と国民国家の限界
2 フランスの「栄光の三〇年間」とヨーロッパ
3 オイルショックとフランスモデルの動揺
4 冷戦の終焉とEUの発足
5 グローバリゼーションとEUに反発するフランス
人名索引/事項索引