
概説 近代スペイン文化史 18世紀から現代まで

芸術、フラメンコ、闘牛……。様々なイメージとともに語られるスペイン。本書は、一八世紀から現代までのスペイン文化の歴史を一冊で学べるテキスト。第Ⅰ部で時代ごとに政治・社会の歴史的過程を、第Ⅱ部で言語、文学、美術、映画、フラメンコ、闘牛、スポーツなど多彩なトピックを扱い、読者を豊かなスペイン文化の世界へと誘う。
[ここがポイント]
◎ 芸術、フラメンコ、闘牛、といったイメージで一般に知られるスペイン文化を、歴史的背景に即して精緻に描き出す概説書
◎ 文化的トピックだけでなく、政治・社会の歴史的過程も概観でき、近現代スペインを多角的に理解できる1冊
第Ⅰ部 近現代の文化史的あゆみ
概 説
第1章 啓蒙思想・啓蒙改革の時代(立石博高)
1 「長い18世紀」のはじまり
2 カトリック的啓蒙と教会
3 啓蒙的諸改革の構想
4 新たな学問と芸術
5 スペイン啓蒙の限界
コラム1 オラビーデとディドロ――啓蒙思想の異相
第2章 自由主義とロマン主義の時代(立石博高)
1 19世紀と国民国家の構築
2 ロマン主義からエクレクティシズムへ
3 国民形成の装置
4 共和主義の台頭
コラム2 19世紀スペインにおける理想的女性像
第3章 王政復古期の文化(山道佳子)
1 多様性と変容の時代
2 国民形成の文化的側面
3 国民文化と地方文化
4 世紀転換期の危機と「再生主義」
5 体制から排除された勢力
6 消費社会の出現と大衆文化
第4章 第二共和政・スペイン内戦期の文化(八嶋由香利)
1 共和国の成立
2 アヴァンギャルドと大衆文化
3 内戦の勃発
4 文化とプロパガンダ
5 内戦下の人々
コラム3 ガルシア・ロルカと移動劇団「ラ・バラーカ」
第5章 フランコ時代の体制文化と対抗文化(武藤 祥)
1 フランコ時代の歴史的背景
2 体制文化――分断のなかでの国民形成
3 体制文化の変容と対抗文化の形成
4 社会変容と大衆文化の広がり
5 独裁末期――部分的自由化から文化的解放へ
第6章 ポストフランコ期の文化(武藤 祥)
1 民主化と文化的解放
2 多文化国家への道
3 「普通の国」への変容と現代文化
4 アイデンティティをめぐる揺らぎと模索
コラム4 文化作品におけるスペイン内戦の記憶
第Ⅱ部 近現代文化の諸相
概 説
第7章 国家語と地方語のせめぎあい(川上茂信)
1 多言語国家スペイン
2 国家語の確立
3 地方語の復権
4 自治州体制と多言語性
5 多言語的ヨーロッパ
第8章 国民文学と地方文学(柳原孝敦)
1 テクストを通じて国民文学を考える
2 ロマン主義と国民文学
3 ロマン主義以後
4 現代のスペイン文学
第9章 女性像の変容(磯山久美子)
1 家庭内から家庭外へ――民主化以前
2 第二共和政から内戦まで
3 妻,母への回帰――フランコ体制
4 民主化から現在まで
5 変容する家族像
第10章 教会・国家と脱宗教化(渡邊千秋)
1 自由主義とカトリック教会
2 反教権主義運動の展開と教会
3 内戦,フランコ独裁,そして民主スペインへ
4 現代における宗教的多元性と教会
コラム5 マドリードにおけるカトリック・ワールド・ユースデイ開催の「功罪」
第11章 伝統的モラルと新たな市民性(塩見千加子)
1 伝統的モラルと農村社会の変化
2 アグロタウンの住民の生活と価値観
3 現代の社会問題と多様な価値観の登場
4 新たな市民社会の構築に向けて
第12章 近現代美術の展開(木下 亮)
1 18世紀の宮廷美術
2 19世紀から20世紀へ
3 20世紀の前衛芸術と「巨匠」
4 現代の美術
第13章 映画の世界(柳原孝敦)
1 草創期
2 内 戦――フランコ独裁期
3 新しい時代
4 フランコ以後
第14章 創られるフラメンコの世界(川上茂信)
1 フラメンコという伝統
2 語源の問題
3 フラメンコの誕生
4 伝統と革新
5 文化遺産としてのフラメンコ
第15章 「国技」としての闘牛(柳原孝敦)
1 国技としての闘牛
2 闘牛の歴史
3 文化のなかの闘牛
第16章 スポーツの文化史(山道佳子)
1 近代スポーツの伝播と受容
2 大衆娯楽の誕生とスポーツの発展
3 政治とスポーツ――プリモ・デ・リベーラ独裁からスペイン内戦の勃発
4 フランコ体制下のスポーツ
5 フランコ体制の崩壊と現代のスポーツ
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