グローバル・ヒストリーとしての「1968年」 世界が揺れた転換点
1968年、先進国を中心に同時多発的に起こった社会運動は、日本社会を学園闘争という混乱に巻き込んだ。そのグローバルな流れを作っていったのは、前史としての世界状況なのか? また、結果として生まれた「新しい社会運動」は、現在のわれわれに何を遺しているのか。本書は、68年を体験していない世代が、保守・リベラルにこだわらず「1968年」を立体的に捉える現代史の試みである。
[ここがポイント]
◎ 1968年非体験世代の論客が社会の転換点を相対的に捉える。
◎ 1968年に世界中で「何が起こったのか」、そしてその後世界は「どう動いたのか」まで解説する。
序 章 なぜ今「1968年」なのか(西田 慎/梅崎 透)
1 なぜ「1968年」「1960年代」を議論するのか
2 グローバル・ヒストリーとして「1968年」を捉える
3 「1968年」「1960代」を世界史にどう位置付けるか
4 本書各章の概要
第Ⅰ部 何が「1968年」を引き起こしたのか
第1章 ベトナム戦争の余波(梅崎 透)
1 ベトナム戦争の経緯
2 アメリカにとってのベトナム戦争
3 ベトナム戦争と世界
4 ベトナム戦争の前と後で
第2章 第三世界の現実(粟飯原文子)
1 第三世界とは何か
2 1960年代の第三世界
3 第三世界と1968年
4 第三世界の1968年
第3章 新左翼の台頭(西田 慎/梅崎 透)
1 新左翼とは何か
2 イギリスとアメリカのニューレフト
3 西ドイツの新左翼
4 新左翼の英米独比較
第4章 サブカルチャーが社会を変える(田中晶子)
1 「反シュプリンガー・キャンペーン」の展開
2 「対抗的公共圏」と青少年サブカルチャー
3 国境を越える音楽文化の展開
4 青少年サブカルチャーとしての漫画
第Ⅱ部 世界の「1968年」
第5章 アメリカ――運動の盛衰と文化変客(梅崎 透)
1 「豊かな社会」の中から
2 政治意識の高揚
3 公民権・ベトナム反戦・第二波フェミニズム
4 一つの終焉と新たな運動の開始
5 アメリカの「60年代」の成果と評価
第6章 西ドイツ――APO(西田 慎)
1 経済の高度成長の影で
2 議会外反対派の発生
3 運動の全国化と暴力の応酬
4 終焉からその後に与えた影響
第7章 フランス――5月革命(中村 督)
1 1960年代と「政治的なるもの」
2 運動の発生
3 「5月」の展開
4 過ぎる5月と「5月」
5 「5月」の今日的意義
第8章 イギリス――ニューレフト(河野真太郎)
1 「豊かな社会」から1968年
2 運動の発生
3 短い革命?
4 終焉とその後に与えた影響
第9章 チェコスロヴァキア――プラハの春(福田 宏)
1 踏みにじられた「プラハの春」
2 第二次世界大戦後の冷戦と社会主義
3 社会主義体制におけるビートルズ
4 解き放たれていく期待
5 未知の領域への船出
6 軍事介入による「正常化」
7 「輝かしい時代」の再検討
第10章 中 国――文化大革命が遺したもの(横山政子)
1 『赤い大地 黄色い大河』に見る体験
2 大躍進運動から文化大革命へ
3 文化大革命の展開と社会の混乱
4 文革路線の転換
第11章 日 本――全共闘とべ平連(安藤丈将)
1 経済成長とベトナム戦争の時代
2 民主化とアメリカ
3 運動の発生
4 自分の生き方を問い直す
5 「自己変革」の陥った罠
6 ポスト「1968年」の日本的展開
第Ⅲ部 ポスト「1968年」
第12章 〈新しい女性運動〉とその後(兼子 歩)
1 第二波フェミニズム運動
2 反動の時代
3 新自由主義体制下のジェンダー
4 現代の男女
第13章 新しい環境運動(石山徳子)
1 環境正義運動
2 誕生と発展
3 連邦政府による環境正義政策
4 歴史的な起源
5 思想的な広がり
6 環境正義運動の将来
第14章 知の変遷(中村 督)
1 「5月革命」と知の変遷
2 ジャーナリズムの商業化と知識人
3 知識人の終焉という矛盾
映画・ドラマコラム
『七月四日に生まれて』
『アルジェの戦い』
『日本の夜と霧』
『男性・女性』
『アクロス・ザ・ユニバース』
『バーダー・マインホフ 理想の果てに』
『五月のミル』
『If もしも…』
『芙蓉鎮』
『パルチザン前史』
『セックス・アンド・ザ・シティ』
『エリン・ブロコビッチ』
あとがき/人名・事項索引