中谷宇吉郎 人の役に立つ研究をせよ
物理学者(1900年〜1962年)
石川県生まれ。寺田寅彦に師事する。北海道帝国大学赴任後は雪の研究にはじまり霧を消す研究などに取り組み、科学映画、科学随筆でも活躍した。豊富な人脈をもとに時代を駆け抜けた稀代の物理学者の生涯に迫る。
[ここがポイント]
◎ 雪の研究で有名な科学者の八面六臂の活躍ぶりが時代状況とともによくわかる。
◎ 啓蒙書、科学映画の制作、研究資金の獲得など、従来の科学者にない取り組みの様子が詳細に描かれている。
[副題の由来]中谷は真理を追究し論文を書くだけの科学は時代錯誤であると考え、時代や社会が求める課題を解決する「目的をもった基礎研究」こそが重要だと主張した。厳しい時代にあっても研究資金を集め得たのも、研究成果を啓蒙書や映画などの形で広めていったのも、この考え方によると言えよう(本書299〜311頁参照)
第一章 出生から留学まで
1 加賀の文化にはぐくまれる
2 東京で学び、海外へ留学
第二章 まだ平和な時代に
1 雪の研究
2 大活躍の1936年
3 別の潮流
4 雪の研究だけに非ず
5 飛躍の1938年
6 幅広い交友関係
第三章 戦争一色の時代に
1 凍上の研究
2 低温科学研究所
3 着氷の研究
4 霧の研究
5 執筆活動で抵抗
6 戦後に向け
第四章 貧しくも希望に満ちた時代に
1 農業物理研究所
2 科学の啓蒙
3 水害の研究
4 「国土の科学」
5 ダムの埋没
6 農業物理研究所の解散
第五章 新しい世界へ
1 オスロでの学会
2 アメリカへ
3 カナダとアメリカの旅
4 科学映画の再興
5 よい映画とは
6 映画と書籍を連動させる
7 海の研究に、潜水探測機
8 好奇心
第六章 対立の時代に
1 アメリカで2年間の研究生活
2 米軍研究費をめぐる問題
3 SIPREとは
4 第五福竜丸事件をめぐって
5 社会評論
第七章 氷の世界へ
1 南極観測
2 グリーンランドへ
3 書きつづける
終 章 科学研究はどうあるべきか
1 「基礎科学」をめぐって
2 「軍事研究」をどう考えるか
3 「立派な人生だったよ」
参考文献
あとがき
中谷宇吉郎関連年譜
人名・事項索引