ケインズ対フランク・ナイト 経済学の巨人は「不確実性の時代」をどう捉えたのか
名行司がしきるケインズとナイトの横綱相撲
根岸隆氏(学士院会員・東京大学名誉教授)推薦
現代の世界経済は先の見えない混迷の時代を迎えている。今こそ蓋然性論や不確実性論に先駆的な業績をあげた二人の巨人を再検討する必要がある。ケインズの思想と対比することにより、難解で知られるナイトの思想への理解を助ける。本書では、「銀の匙」対「木の匙」、生まれも境遇も違う両巨人の思想・理論の比較から現代に生きる考え方を読み取り、新しい経済学実現への道を探るものである。
[ここがポイント]
◎ 20世紀の巨人の対決から新しい経済学を探る。
◎ ケインズとの比較のなかで、ナイトの難解な思想を解きほぐす。
序 いまなぜケインズとナイトなのか
第1章 「想定外」を想定する——ケインズ対フランク・ナイト
1 「悩める力」の時代に生きて
2 「波瀾千丈」の学者人生
3 ケインズとナイトの同時代人たち——確実性か不確実性か、ミクロかマクロか
4 社会科学のさらなる発展を目指して
第2章 蓋然性論と不確実性論——奇跡の1921年
1 奇跡の1921年
2 ケインズの蓋然性と不確実性
3 ケインズとナイトの比較
4 ケインズの世界
第3章 ナイトのトリアーデ——リスク・不確実性・利潤
1 個人史とナイトの深い影
2 リスクと不確実性——似て非なるもの
3 リスクの量と質
4 ナイト理論の現代的評価
第4章 時代の子ケインズと新しいヴィジョン——ナイトへの接近と離反
1 難解な悪書
2 「古い考え方」と「新しい考え方」
3 ケインズの新しいアプローチ
4 ケインズ・スピリッツの衰退と再復活
第5章 ケインズの新理論——『一般理論』の衝撃
1 二つの「一般理論」と解説論文
2 不確実性、失業、貨幣及び利子
3 投資行動と不確実性
4 不確実性下の利子論
5 IS-LMモデルを超えて
第6章 市場均衡の美学とナイトの異論——競争の論理と倫理
1 おカネで買えるもの、買えないもの——サンデル対ベッカー
2 一般均衡理論の美学とイデオロギー
3 厚生経済学の基本定理——市場均衡とパレート最適
4 フランク・ナイトの異論と複眼思考
5 真・善・美の世界を再び考える——理想から現実へ
第7章 ベルヌーイからケインズ=ナイトまで——原発のリスク経済分析
1 チェルノブイリ25周年とフクシマ原発危機
2 経済学におけるリスクと不確実性の取り扱い
3 ベルヌーイによる期待効用アプローチ
4 原発の分析と枠組みの拡大——ケインズ=ナイトの心理ファクター
5 安全神話や想定外を乗り越えて
第8章 同時代人たちを超えて——不確実性の時代を生きる
1 世界恐慌は繰り返す——1930年代と2000年代
2 「アニマル・スピリッツ」を論じる——新しい社会科学への道
3 経済学者は何をしているか——原発と現代経済学
4 交響楽的社会科学への道
あとがき
ケインズ/フランク・ナイト関連年表
人名・事項索引