障がいのある子の保育・教育のための実践障がい学
障がいのある子の保育や教育の重要性は指摘され続けているが、その実践を支えるための「考え方」はいまだ十分に整理されていない。本書では、実践と研究に長年携わってきた著者が、自らの経験をもとに、心理学・現象学・自己組織化理論・脳科学など様々な領域の知見を取り入れながら、子どもが生きている「現実」やそれを支援する方法を探っていく。季刊誌『発達』の連載12回分に加筆修正してまとめた単行本。
[ここがポイント]
◎ 障がいのある子の保育・教育の実践と研究に長年携わってきた著者による支援に生かせる内容。
◎ 特別支援教育に携わる教員・学生のための教科書・参考書として活用できる。
第Ⅰ部 構想と方法論――実践障がい学の構想と子どもを語る技法
第1章 「対話のためのテクスト」をつくる
1 いとぐちとしてのトランスサイエンス
2 「学」としての「冷静さ」
3 「学」としての「繊細さ」
第2章 「困り感」から「視線が向かわない領域」へ
1 「困り感」と「障がい文化」
2 視線が向かわない領域
3 言葉の余白にある,子どものいまここ
第3章 現象学による語りの技法
1 語りの技法の基盤⑴ 現象学的記述
2 語りの技法の基盤⑵ 身体性
3 技法ないしは道筋の妥当性
コラム 専門より教養
第Ⅱ部 現象学的アプローチ――「現実」を成立させる身体
第4章 自我が育つ手前で
1 音の連なりの意識
2 重い障がいのある子どもの世界経験
第5章 姿勢活動の育ちと情動の伝染
1 姿勢活動の育ちと情動の伝染
2 情動の伝染
コラム おとなの仕事
第6章 身体上の主客関係
1 メルロ=ポンティの思想
2 身体が分化する
3 外界とつながる
第7章 世界が「相貌・表情」を帯びる
1 「意味」が与えられる
2 「相貌・表情」の現れ
3 他者の介在
4 情緒的交流に向けて
第8章 〈今〉を構成する〈私〉
1 〈私〉と〈今〉をめぐる問い
2 「もの」と「こと」
3 〈私〉の〈今〉が構成される
コラム 自立について
第Ⅲ部 自己組織化の仕組みから学ぶ――固有の「現実」の生成
第9章 新たな経験の回路を開く
1 オートポイエーシスの理論構想
2 自己組織化とオートポイエーシス
3 半側空間無視の経験
4 自己の再組織化に向けて
5 オートポイエーシスの活用
第10章 損傷したシステムからの発達
1 システムの損傷と復興
2 抑制機構と身体の変形
3 ランディング・サイトとその喪失
コラム 記録について
第11章 動作の創発
1 脳性麻痺のリハビリ
2 感触と気づき
3 動作の区切りと記憶
4 二重作動
第12章 認知行為による世界とのかかわり
1 認知行為
2 行為としての注意
3 行為としての記憶
あとがき/索引