日本環境教育小史

1980年代中盤から環境教育に関わり始めた著者は、90年代に入って、現職教員から「環境教育は何をすればよいのですか」といった質問をたびたび受けた。近年に至ってもしばしば同様の質問を受ける。このような質問が未だに発せられることは、環境教育が学校教育現場に十分に浸透していないことを物語っているのではないかと考えた著者は、現状の背景や要因を環境教育の史的展開の中に見出し、考究することの方が重要であると考え、日本の環境教育の史的展開の中に問題解決の糸口が隠されていると考えるに至った。本書では、日本の環境教育の歩みに正面から取り組み、環境教育の起源や展開を詳細に追う。環境教育が登場する1970年から2010年頃までの約40年間について、義務教育段階における全国的な環境教育調査結果を踏まえつつ、国内外の環境教育の史的展開を論じる。

 

［ここがポイント］
◎ 環境教育の本質的な 展開 を描き出す。
◎ 現在の学校教育での環境教育において現状問題となっている点の背景や要因を史的展開の中に見出す。

はじめに

序　章　本研究の目的・課題と本書の構成
　１ 本研究の目的と課題
　２ 先行研究
　３ 本書の構成

　第Ⅰ部　環境教育の国際的展開
第１章　国際的な環境教育の創成（1970年代）
　１ 用語“Environmental Education”の最初の使用
　２ 環境教育の提唱――国連人間環境会議（ストックホルム会議）
　３ 創成時代の国際的展開

第２章　国際的な環境教育の普及（1980年代）
　１ IEEPによる環境教育の普及と推進
　２ 「持続可能な開発」概念と「アジェンダ21」

第３章　国際的な環境教育の枠組み拡大（1990～2000年代）
　１ 地球サミット以後の国際的動向
　２ 「持続可能な開発のための教育の10年」への歩み

　第Ⅱ部　日本における環境教育の展開
第４章　環境教育の登場以前
　１ 環境問題・環境保全の概略史
　２ 環境教育の源流

第５章　環境教育の創成（1970年代）
　１ 用語「環境教育」の登場
　２ 創成時代の国内の展開

第６章　環境教育の普及（1980～90年代）
　１ 環境教育低迷の時期
　２ 環境教育の低迷から普及へ
　３ 普及時代の国内の展開

第７章　環境教育の枠組み拡大（2000年代）
　１ 枠組み拡大時代の環境保全に係る動向
　２ 枠組み拡大時代の環境教育の動向

　第Ⅲ部　小・中学校における環境教育の展開
第８章　創成時代の小・中学校環境教育（1970年代）
　１ 創成時代の学習指導要領
　２ 創成時代の小・中学校環境教育の状況

第９章　普及時代の小・中学校環境教育（1980～90年代）
　１ 低迷の時期の小・中学校環境教育の状況
　２ 普及時代の小・中学校環境教育の状況

第10章　枠組み拡大時代の小・中学校環境教育（2000年代）
　１ 1998（平成10）年　学習指導要領改訂
　２ 枠組み拡大時代の全国調査に見る実践現場の状況
　３ 「総合的な学習の時間」における環境教育実践状況

終　章　本研究の総括
　１ 環境教育の国際的展開
　２ 日本における環境教育の展開
　３ 小・中学校における環境教育の現状とその要因

補　論　近年の小・中学校環境教育
　１ 2008（平成20）年　学習指導要領改訂
　２ 全国調査に見る近年の実践現場の状況
　３ 「総合的な学習の時間」における環境教育実践状況

謝辞・おわりに
引用文献
資　　料