戦後日本教育方法論史(上) カリキュラムと授業をめぐる理論的系譜
本書は,戦後初期から現在までの教育実践研究・教育方法研究の成果を一望する,研究者・学生にとっての必読書の上巻である。
教育方法学の基本的な論点と理論的な系譜を軸に,戦後教育史において重要な問題領域とそこで追求された主題・方法論をとりあげる。各章での解説は時代区分により整理されており,時代ごとの理論や実践,論争の特徴・課題を検討していく。
[ここがポイント]
◎ 教育方法学の分野で多くの優秀な研究者を輩出している京都大学教育学部田中研究室の総力を結集した本
◎ 各章で基本的で重要名な論点を一つずつとりあげ、それぞれ専門の研究者が執筆している
◎ 歴史上重要な論争についてもれなく論じている
序 章 戦後日本教育方法論の史的展開(田中耕治)
はじめに
1 戦後初期「問題解決学習」とその批判
2 戦後初期「生活指導」論の展開
3 「現代化」と授業研究の展開
4 「現代化」批判と授業研究の展開
5 「生活指導」論の展開──「集団」のとらえなおし
6 教育方法論の現在
コラム1 『学級革命』をめぐって
コラム2 「たのしい授業」をめぐる論争
コラム3 斎藤喜博をめぐるトライアングル
第1章 書くことによる実生活と教育の結合──生活綴方における戦前からの継承と戦後の展開(川地亜弥子)
はじめに
1 戦後の復興──ヒューマニズムの精神
2 生活綴方の理論的整理と論争
3 子どもの内面に向き合う綴方へ
おわりに
第2章 子どもと社会に根ざす生活教育──生き方の探求と生活の創造をめざして(木村 裕)
はじめに
1 カリキュラム論の展開
2 連盟内外からの批判と子どもの生活や社会の変容をふまえた展開
3 現代の教育改革への問題提起
おわりに
第3章 子どもたちの自立と共同を支える生活指導──自治活動と文化活動を通じた集団づくり(二宮衆一)
はじめに
1 「仲間づくり」としての生活指導論──学習論的生活指導論における生活綴方の継承
2 「仲間づくり」から「集団づくり」への転換──訓練論的生活指導論としての生活綴方の継承
3 能力主義による社会の再編と生活指導の新たなる課題
4 現代的訓育論としての生活指導の模索
おわりに
第4章 「科学と教育の結合」論と系統学習論──反知性主義への挑戦と真の知育の追求(石井英真)
はじめに
1 教科内容の現代化の展開
2 「科学」に対する教育や生活の主体性の追求
3 「真理」の絶対性のゆらぎの中の系統学習論
おわりに
第5章 学力問題と学力論──「生き方」との結合をめざして(樋*口とみ子)
はじめに
1 知識と態度の関係
2 「病める学力」の克服──「生きること」と「わかること」
3 「個性」とその測定
4 生きる力と学力の関係
おわりに
第6章 教育実践を支える評価──民主主義の新たな基盤(遠藤貴広)
はじめに
1 戦後初期の教育評価
2 到達度評価の誕生
3 目標・評価関係のゆらぎ
4 「真正の評価」論のインパクト
おわりに
第7章 授業の本質と教授学──教えることのアートをすべての教師のものに(石井英真)
はじめに
1 教育研究における教授・学習過程への着目と「教授学」への志向性の成立
2 「教育技術」論の再検討と授業づくりの理論
3 「学び」論の展開と教授・学習過程研究の現代的課題
おわりに
第8章 授業記録の歴史をひもとく──教育方法学にとってのエビデンスとは何か(伊藤実歩子)
はじめに
1 重松鷹泰の授業分析
2 上田薫の授業研究
3 重松鷹泰と上田薫──授業分析と授業研究
4 子ども/学校の変容と授業記録──1980年代以降
おわりに
第9章 集団と共同による授業の創造──学習集団をいかに形成するか(二宮衆一・渡辺貴裕)
はじめに
1 学習集団概念の登場
2 「学習にとりくむ集団」としての学習集団
3 学習集団の固有性と授業における学習集団の追究
4 学習集団と教育内容・教材の訓育性
5 「学びの共同体」のインパクトと新たな展開
おわりに
第10章 学習の身体性──精神と身体の二元論を超えて(渡辺貴裕)
はじめに
1 二つの「からだ」論の登場
2 認識の基盤としての身体への着目と身体の可能性を試みる実践の展開
3 新しい学習の形態と身体
おわりに
第11章 授業研究と教師としての発達──観を編み直す学びに向けて(吉永紀子)
はじめに
1 授業研究の科学化がもたらした教師としての発達
2 教育技術の共有財産化に寄与した授業研究
3 新たな教師=専門家像の台頭が要請する授業研究のスタイル
4 教師の学習・発達を支える仕組みをつくり変える
おわりに
あとがき
人名索引
事項索引