自閉症スペクトラムの症状を「関係」から読み解く 関係発達精神病理学の提唱
本書は,自閉症スペクトラムの生涯発達で出現する多様な症状を「甘えのアンビヴァレンス」を軸に「関係」から解き明かす。従来の精神病理に対する見方を根本から覆し,新たに関係発達精神病理学を構築する。
[ここがポイント]
◎ 乳幼児期から成人期までを視野に入れて自閉症スペクトラム(発達障碍)について考察している
◎ 本書全体を通じて、新しい発達障碍概念を提示している
第Ⅰ部 関係発達精神病理学の構築に向けて
第1章 精神医学における症状を再考する
1 精神医学の特質
2 症状学はどのようにして生まれたか
3 いま「症状」はどのように捉えられているか
4 新たな症状はどのようにして生み出されるか――4段階のプロセス
5 症状を再考する
6 「関係をみる」とはどういうことか
7 児童精神医学における症状を考える上で忘れてはならないこと
第2章 自閉症スペクトラムの症状はどのようにして生まれるか――「関係」からみた症状の意味するもの
1 乳児期の母子関係の病理――甘えのアンビヴァレンス
2 甘えのアンビヴァレンスへの対処行動としての多様な病理的行動
第3章 アンビヴァレンスへの対処行動はいかなる症状(病態)へと発展するか
1 乳幼児期のアンビヴァレンスへの対処行動が生涯発達過程で辿る経路
精神療法では症状ではなくアンビヴァレンスに焦点を当てなければならない
3 アンビヴァレンスを捕捉するために大切なこと
4 乳幼児期の対処行動こそその後の症状の原型である
第Ⅱ部 自閉症スペクトラムにみられる多様な症状を「関係」から読み解く
第4章 乳幼児期の症状
1 乳幼児期の早期兆候
2 幼児期にみられる特徴的な症状
3 限局された興味、常同反復的行動、強迫的こだわり
第5章 言葉の発達病理
1 言葉の発達病理を理解する際の基本的枠組み
2 多様な言葉の発達病理を「関係」から読み解く
第6章 行動障碍
1 行動障碍の背景にあるもの
2 行動障碍の引き金になるもの
3 なぜ行動障碍に発展するのか
4 行動障碍の具体例
第7章 心身症・神経症様症状
1 ストレスに対する身体反応
2 心理状態と身体機能の関連――心身相関
3 心身症の具体例
4 神経症の具体例――強迫状態
第8章 虐待関連の症状
1 愛着障碍と発達障碍
2 虐待事例にみる関係病理とその後の進展過程
第9章 精神病(統合失調症・躁うつ病)様症状
1 母親の誘いに容易に動かされる――主体性・能動性・自発性の欠如
2 口で言うことと身体で反応していることの乖離――「ダブルバインド」的な関係病理
3 自分が他者によって動かされる――作為体験(させられ体験)
4 作為体験と自明性の喪失
5 強い不安によって外界刺戟が容易に変容する――知覚変容現象
6 原初的知覚体験に独自の意味づけをする――妄想知覚
7 環境世界を独自に意味づける――妄想形成
8 明確な対処法を見出せず身を硬くする――カタトニア
9 一人で独自の世界に没入する――独言、自閉
10 躁状態
11 うつ状態――入院中に自殺企図をした事例
むすびにかえて――いまなぜ関係発達精神病理学か
文 献
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