なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか 子どもの豊かな育ちを保障するために
近年の多くの研究が、乳幼児期の生活と教育の質がその後の子どもの人生のみならず社会全体に、大きな影響を与えることを明らかにしている。これらの研究結果を背景として、OECD・EU諸国を中心に、「質の高い保育」をめざして幼児教育・保育改革が進められている。本書では、このような世界の保育改革の実際を省察することを通して、子どもたちの豊かな育ちを保障するために必要なこととは何かを考えるとともに、日本が抱える保育問題の解決の糸口を探る。
[ここがポイント]
◎ それぞれの国に精通した執筆陣が、「保育の質」を軸に、各国の保育・教育の制度、政策も丁寧に解説
◎ 豊富な資料・各国の実践を掲載
序 章 世界の保育の質改革の動向――21世紀型保育へのチャレンジ(泉 千勢)
1 動き出す世界の保育改革
2 21世紀型教育の課題――キー・コンピテンシーの探究
3 OECD保育政策調査
4 OECD “Starting Strong”の提言内容
5 EU(欧州連合)の保育改革の取り組み
6 「保育カリキュラム」の研究動向
7 世界各国の保育改革の動向
第1章 ノルウェー王国――男女平等を牽引した人権尊重の国(泉 千勢)
1 ノルウェー王国の社会歴史的背景
2 保育の歴史
3 保育内容――保育カリキュラム
4 保育環境と保育の質
5 日本の保育への示唆――ノルウェーの保育から学ぶこと
第2章 スウェーデン王国――揺るがぬ子どもの権利の視点(白石淑江)
1 保育を支える家族福祉制度
2 保育の歴史――子ども自身の権利としての保育
3 就学前の保育の場と保育者養成
4 子どもの権利に基づく保育実践
5 保育実践例
6 日本の保育への示唆――スウェーデンの保育から学ぶこと
Column スウェーデンにおける就学前教師をめぐる状況
第3章 デンマーク王国――保護者との協働による普遍的な保育サービス(石黒 暢)
1 保育の背景
2 現在の保育制度
3 保育の質の向上をめざして――保育内容と実践
4 保育実践例――オーデンセ市のウアベクパーゲンスバアネフス統合保育施設
5 日本の保育への示唆――デンマークの保育から学ぶこと
第4章 ドイツ連邦共和国――統一後の保育・就学前教育改革の動向(豊田和子)
1 保育の歴史的背景――源流と2つの保育文化
2 保育制度――保育請求権と量的拡大
3 質向上とナショナルスタンダードの作成
4 新しい子ども観に立脚する連邦共通大綱と各州のプログラム
5 日本の保育への示唆――ドイツの保育から学ぶこと
第5章 フランス共和国――公教育を基軸に幼児期の育ちを支える(赤星まゆみ)
1 最初の学校――家庭と学校を機軸として社会につながる子どもの育ち
2 現在の保育学校――「共和国の学校再建」の切り札
3 保育の質改善に向けた取り組み――2015年プログラム
4 日本の保育への示唆――フランスの保育から学ぶこと
第6章 カナダ――人権意識の高い多民族国家(伊志嶺美津子・藤川史子)
1 保育の歴史的背景
2 現在の保育制度
3 保育内容
4 保育実践――エマージェント・カリキュラム
5 家族支援の実践
6 日本の保育への示唆――カナダの保育から学ぶこと
第7章 ニュージーランド――「学びの物語」と保育の質向上の取り組み(鈴木佐喜子)
1 保育の質に関わる保育政策の展開
2 保育の外部評価(Education Review)と自己評価(Self-Review)
3 「学びの物語」が提起したアセスメントの転換
4 「学びの物語」の保育実践
5 子どもの学びの成果をめぐって――「テ・ファリキ」と「学びの物語」に対する圧力の強まり
6 日本の保育への示唆――ニュージーランドの保育から学ぶこと
第8章 オーストラリア連邦――保育の質改革への挑戦(林 悠子)
1 幼児教育・保育に関する基本的情報
2 幼児教育・保育改革――乳幼児発達国家戦略「乳幼児への投資」
3 国の質枠組み(The NQF)のもとでの保育の質向上の取り組み
4 質評価の仕組み――国の質基準(NQS)を中心に
5 資格要件の向上と保育者と子どもの比率
6 学びの枠組み(フレームワーク)
7 日本の保育への示唆――オーストラリアの保育から学ぶこと
第9章 大韓民国――幼児教育・保育改革の動向(韓 在熙)
1 韓国の保育制度改革の概観
2 乳幼児の現況と少子化
3 幼児教育・保育政策の変遷
4 幼保統合カリキュラム「3〜5歳児年齢別ヌリ課程」の実施
5 保育の質の向上と保育カリキュラム
6 幼児教育・保育の質を向上するための評価制度
7 今後の幼保統合への政策展開
8 日本の保育への示唆――韓国の保育から学ぶこと
第10章 台 湾――幼保一元化(幼托整合)政策の現状と課題(翁 麗芳)
1 台湾における幼稚園と托児所の歴史
2 幼保一元化(幼托整合)政策――「幼児園」の誕生
3 ECECの質保障
4 台湾の保育改革の現状と今後の課題
5 日本の保育への示唆――台湾の保育から学ぶこと
終 章 世界の保育から日本は何を学ぶのか――「すべての子どもの幸せ」の実現に向けて(泉 千勢)
1 世界の保育改革の方向性
2 「子ども・子育て」の変遷
3 日本は世界の保育から何を学ぶべきか
索 引