選挙ガバナンスの実態　日本編 「公正・公平」を目指す制度運用とその課題

民主政治の根幹をなす選挙は、はたして公正・中立に行われているのか。選挙制度が選挙結果に与える影響は既に多くの研究がなされているが、選挙実務そのものがいかなる影響を与えているかは、着手されたばかりである。それを、本書は国内外の実態調査から余すところなく解明する。本書では、国際的に見てもかなり特異な日本の選挙管理の実態を、アンケート調査などから明らかにし、またなぜ様々な問題が起こっているのかをも考察する。


［ここがポイント］
◎ 日本の選挙管理が世界的に見て特異であることを紹介する。
◎ 「全国市区町村選挙管理委員会事務局アンケート」と「対有権者選挙管理アンケート」の成果を踏まえた研究成果。

はしがき

序　章　日本の選挙ガバナンス——世界の中でどう位置づけるか（大西　裕）
　１ 選挙管理の「神話」
　２ 選挙ガバナンスの定義
　３ 選挙管理機関
　４ 世界の中の日本の選挙管理
　５ 選管アンケート調査の概要
　６ 本書の構成


　第Ⅰ部　選挙ガバナンスを動かすもの

第１章　選挙管理委員とは誰か——選挙管理委員のなり手と委員会の型（品田　裕）
　１ なぜ選挙管理委員会について調べるのか
　２ 選挙管理委員の属性
　３ 回答数のばらつき
　４ 委員会の型がもたらすもの
　５ 委員会の型をもたらすもの
　６ 選挙管理委員会の型と将来の姿

第２章　選挙管理委員会事務局の能力・専門性・自律性——選管アンケート調査に見るその実態（曽我謙悟）
　１ 選挙管理と大学入試
　２ 先行研究と分析の視点
　３ 選管事務局の実態——規模，配属年数，専任率
　４ 選管事務局のあり方を規定する要因
　５ 選管事務局のあり方の帰結（１）——委員会への影響や業務のアウトプット
　６ 選管事務局のあり方の帰結（２）——選挙のアウトカム
　７ 民主制を支える行政

第３章　首長は選挙管理に影響を与えるか——市長の選挙戦略と選挙管理委員会事務局の意識（藤村直史）
　１ 首長と選挙管理員会の関係
　２ 首長の誘因
　３ 仮説：首長の選挙環境と選挙管理
　４ データと方法
　５ 分析結果
　６ 首長と選挙管理委員会事務局の関係

第４章　選管職員の中の「積極的投票権保障」とその困難——全国選管職員調査のテキスト・計量分析より（秦　正樹）
　１ 積極的投票権保障をめぐる選管職員の「困難」
　２ 本章で用いるデータについて
　３ 選挙管理上の課題
　４ 「積極的投票権保障」と「業務の効率性」の関係
　５ 「積極的投票権保障」と「業務の効率性」の規定要因
　６ 選管職員の中の「積極的投票権保障」


　第Ⅱ部　選挙ガバナンスの課題

第５章　選挙ミスが生じる背景とその防止策——再発防止委員会の経験をふまえて（河村和徳）
　１ 仙台市青葉区で生じた不適正な選挙事務処理
　２ 選挙ミスが生じる背景
　３ 選挙ミス発生とミス防止策の関係
　４ 選挙ミスを減らすためへの動き

第６章　選挙公報とインターネット——地方選挙における選挙公報のネット掲載（岡本哲和）
　１ 選挙管理研究におけるインターネット
　２ 選挙公報のインターネット掲載——それに至る過程とその結果
　３ 地方選挙における選挙公報のインターネット掲載状況
　４ 選挙公報のインターネット掲載を規定する要因
　５ データと分析
　６ 多変量解析による分析
　７ 今後の研究課題

第７章　緊急時対応と選挙管理——温度差がある将来の災害への備え（河村和徳）
　１ 災害発生と選挙事務
　２ 制度比較からみた日本の選挙管理
　３ 緊急時対応マニュアルの作成状況
　４ 緊急時対応から見た日本の選挙管理の弱さ

第８章　総務省と選挙管理委員会——積極的投票権保障をめぐって（大西　裕）
　１ 選挙管理と総務省
　２ 理論的検討
　３ 総務省からの逸脱
　４ パフォーマンスの逸脱の説明
　５ 積極的投票権保障の複数性
　６ 「神話」崩壊の意味

第９章　選挙管理への信頼の低下は何をもたらすのか——有権者を対象とする意識調査を通じた検討（善教将大）
　１ なぜ選挙管理への信頼か
　２ 背景と問題意識
　３ 理論と仮説
　４ データと分析手法
　５ 実証分析
　６ 選挙管理への信頼を構築するために

あとがき
資料１　「全国市区町村選挙管理委員会・事務局調査」質問票
資料２　「全国市区町村選挙管理委員会・事務局調査」コードブック
人名索引
事項索引