「自殺対策」の政策学 個人の問題から政策課題へ
◎ 自殺という“ニッチな問題”が、いかにして公共政策上の課題となりえたのか、その政策過程の実相を、包括的に明らかにする。
◎ 自殺対策の計画策定とその実施が義務付けられるなど、実務上の必要性に迫られている関係者に対し、有益な示唆を提供する。
序 章 「自殺対策」という政策課題
1 自殺という問題の背景
2 自殺問題はどのように研究されてきたのか
3 自殺対策の政策過程を検討するにあたって
4 本書の目的
5 検討にあたっての手法
6 本書の新規性と意義
7 本書の構成
第1章 自殺対策の夜明け前──精神医療従事者たちの自殺に対する問題意識と対応
1 基本法制定以前の自殺問題
2 自殺の捉え方の変遷
3 自殺予防に向けての障壁
4 自殺予防の進展と新たな課題の誕生
5 「自殺予防」から「自殺対策」の時代へ
第2章 社会問題としての自殺の誕生──自死遺児による語りが果たした役割
1 自殺対策成立の背景
2 政策転換のメカニズム
3 声を上げた市民たち
4 政策課題化を目指した国会議員
5 自殺対策基本法の制定へ
6 市民が変えた自殺対策のかたち
第3章 自殺対策基本法制定後の政策過程──ライフリンクによる政策提言が与えた影響とその源泉
1 基本法制定後の自殺対策
2 政策過程にNPOが与える影響
3 政策提言に向けた取り組み
4 ライフリンクによる影響力の拡大
5 ライフリンクの影響力の源泉
第4章 地方自治体における自殺対策の成果と課題──東京都足立区を事例に
1 地方自治体の直面する課題
2 自殺対策に着手した背景
3 自殺対策の始動
4 職員の意識と態度の変化に向けて
5 地域における自殺対策の成果と課題
第5章 自殺予防の意味と実践の変容──社会福祉法人 いのちの電話(東京)を事例に
1 自殺対策と民間団体
2 いのちの電話の成り立ち
3 いのちの電話における自殺問題の位置づけ
4 自殺をめぐる社会状況の変化
5 自殺予防機関というイメージの定着
6 民間団体として果たすべき役割とは
第6章 自殺対策基本法の改正過程に見る言説の役割──ナショナル・ミニマムとしての自殺対策へ
1 法改正の背景
2 法改正過程を検討するにあたって
3 自殺対策基本法はなぜ改正されたのか
4 地域の対策を推進するために
5 自殺対策基本法の改正に伴う成果と課題
第7章 自殺対策の限界性──行政による取組から,一人ひとりの主体的な関与へ
1 自殺対策の政策過程を先導してきたもの
2 自殺対策に潜む3つの課題
3 自殺対策の限界性
4 行政による対策を超えて
補 章 イスラーム教徒の自殺抑制要因──シリア・アレッポ大学生へのアンケート調査から
1 自殺をしない人々
2 イスラーム教徒の自殺抑制要因を明らかにするには
3 イスラーム教徒は自殺をどのように考えているのか
注
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引