激動と混迷のイングランド17世紀を生き切ったピューリタン牧師リチャード・バクスターが、どのような社会に生活し、何を目指して牧会、著作活動にいそしんだのか、それが教区にいかなる変化を生んだのか。本書は、それを彼の伝記と著作に即して具体的に展開しようとする。バクスターは、多様な宗教意識をもつ人々の住む教区に「規律」をもたらし、国民教会(「聖なるコモンウェルス」)の「一致」を強く求めた。しかし、教区と教会からはじき出されたのは、「一致」を主張したバクスターであった。彼は君主制国家や国民教会を拒絶しなかった。その点ではむしろ保守的であった。しかし、社会の上層と下層の人々、君主制国家、国定教会は彼をはねつけた。内乱期には、教派と闘う議会派従軍牧師として、共和制期にはキダーミンスターの教区牧師として、王政復古期には「非国教徒」として生きたバクスターのピューリタニズムとはいったい何だったのだろうか。
はじめに序 伝統社会の崩壊とエートス 一 ピューリタン運動の概要とその社会的意義1 ピューリタン主流派と急進派2 ピューリタン運動の諸相3 ピューリタニズムと経済4 ピューリタニズムと社会5 ピューリタニズムと政治 二 R・バクスターのピューリタニズムと社会6 R・バクスターとその時代7 『聖徒の永遠の憩い』(1650年)8 『聖なるコモンウェルス』論(1659年)9 『ファミリー・ブック』(1674年)と 『家庭信仰問答』(1683年)10 『青年への勧告』(1681年)終 「聖なるコモンウェルス」に向けて初出一覧索 引